ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 日常的非凡。 完結。残すは番外編! ( No.52 )
- 日時: 2011/01/22 18:23
- 名前: 螢 ◆KsWCjhC.fU (ID: EFzw/I/i)
轟木家。
「轟木さん」
俺は公園で寝そべっている人に声を掛ける。
轟木さんは俺を見定めるとむくりと体を起こす。
「轟木さんって……」
「……は〜…もうわかっているじゃろう?」
俺の愛している彼女の旧姓と同じ苗字。
彼女に旧姓を聞いた時、聞き覚えがあった。
最初はわからなかったが、今はわかる。
この人と同じ苗字だ。
「貴方は……」
「察しの通り。わしは卯月の家族じゃ」
轟木さんは溜息をつきながら頷く。
「まあ、血は繋がっておらんがの」
轟木さんは空を見つめて話し出した。
卯月と、自分のかかわりを。
「卯月はわしの母親の燕の子じゃ」
「燕……」
燕、愛人ってことか。
「わしの父親は、大層怒ってな。わしを連れて家を出た」
だから苗字が変わったのか。
「わしの母親は、伴侶がいなくなったことで狂った」
狂った。
轟木さんは己を嘲り笑う。
……こういう顔をすると、やっぱり似ている。
「卯月は、苦労したじゃろう。縋れる唯一の肉親が狂ったのだから」
狂っていた。
この人の家族は狂った人ばかりなのか?
「正直、わしはあの男から離れられてせいせいしていた。でも、あいつは……卯月は……」
あの男に、酷いことをされた。
一生癒えない傷を残された。
それは———……
「虐待……」
俺は呟いた。
「そうじゃ。あの男は卯月に暴力をふるった。憎い燕の子を」
ああ、彼女の体にあった傷は、やっぱり虐待か。
彼女が死のうとした一番の理由。
それは、苛められたことではなく。
虐待だった。
「なんじゃ、まだ何かあるのか?」
轟木さんは「これ以上言うことは無いぞ。わしは寝る」と続けたが、俺の耳には入らない。
「結局轟木さんって、男なんですか?女なんですか?」
俺は人生最大の疑問を口に出す。
わからないまま死んだら、死んでも死に切れねぇ!って感じだ。
「言ったら楽しくないじゃろうが」
轟木さんは楽しそうに笑った。