ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 日常的非凡。 完結。残すは番外編! ( No.54 )
- 日時: 2011/01/25 18:39
- 名前: 螢 ◆KsWCjhC.fU (ID: EFzw/I/i)
雪乃の過去。
私の存在なんて、蟻以下。
あいつらにかかれば。
私の存在している意味なんて、簡単に消え去ってしまうのだ。
『雪乃、いってらっしゃい』
優しい母が私を見送る————
「お母様ッ!?」
———夢を見た。
私は肩を上下に揺らして、荒い息を整える。
———夢、か。
少々残念。
少々どころじゃなく残念。
せっかくお母様に会えたと思ったのに。
私は大きい溜息を一つ吐くと、ベッドから這い出た。
もう、優しかったお母様はいない。
今いるのは、新しいお母様。
「お早う御座います」
私は新しいお母様に頭を下げる。
「あら、お早う」
お母様はそんな私を横目で見ると、お父様の元へと駆け寄る。
———父親の機嫌を取ることしか脳が無いゴミ虫野郎が
私は心の内で新しいお母様を毒づく。
新しいお母様は、私にそんな事を思われているなんて思いもせずにお父様に寄り添っていた。
今居るお母様は二番目。
私を生んでくれたお母様は、もう天国に逝ってしまった。
お父様は、お母様の事をとても愛していて、お母様以外と契を交わすことなどできないと言っていたが、親族の圧力によって、名門のお嬢様と結婚することになった。
所詮、人間なんてそんなもの。
私はお母様以外、認めない。
お母様以外が私の母親だなんて絶対に認めない。
新しいお母様を『お母様』と呼んでいるのは、お父様にそう呼べと言われたから。
お母様と呼ぶ度に吐き気がこみ上げてくる。
「お母様は、一人だけなんだから……」
私の呟きは空に散った。
私は、人が嫌い。大嫌い。
だから、人の事を知ろうと思った。
好きになれるかもしれないから。
でも、
人はズルくて、嘘吐きで、馬鹿で。
もっと嫌いになった。
でも——————
「星野!有り難うな」
彼はそういいながら私に缶ジュースを投げてきた。
私がそれを慌ててキャッチすると、彼は自転車にまたがって、帰路を辿る。
「それ、礼。また宜しくな」
私は彼の背中を見つめていた。
——————彼みたいな人だったら。
————————好きになれる、かもしれない