ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: +。*+。*+。*水鏡に映る月の光+。*+。*+ ( No.11 )
- 日時: 2011/01/19 19:22
- 名前: ユフィ ◆xPNP670Gfo (ID: Y8UB0pqT)
第一話 揺らめく月明かりのもとで
「おのれ………」
低い、地を這うような声でうなった六花の目の前には小さい一匹の妖の首の辺りをむんずと掴んでぷらぷらつり下げている青年がいた。青年の頬には、その妖の返り血と思われる赤いものがぺっとりついていた。
この青年の名を慧斗という。
「え〜?でも捕まえたの俺だし…」
「それを見つけたのは私だ!せっかく見つけたのに……」
深く嘆息する六花にちらりと視線を投げかけた慧斗は、自分の掴んでいる獲物……妖をしげしげと見つめる。
「そんなに欲しいの?りっちゃん?」
「はぁ?そんなことは言ってない!大体、りっちゃんってなんだ!りっちゃんって!」
「そっちのほうが可愛いし……」
「可愛いとかそんなことは知らん!」
「えぇ〜?」
慧斗は、六花と同じ歳でありながら、六花に、それはもう面白がっていじる。
当人はうんざりしているようだが、心の底から嫌いという訳でもないだろう。………多分。
「盛り上がってんなぁ〜」
「で、何?あんたは?」
こちらはこちらで、二人の式神が傍観者としてじっとみていたのだが、そろそろ、飽きてきた様子が伺える。その証拠に……
「なぁ、響羅〜今度、俺と……」
「断る。」
早速隣にいる響羅を口説き始めた慧斗の式神、名を紅羅というが、本人曰わく、響羅のことが好きで好きでたまらないそうだ。
しかし、響羅はそんなこと全く知らない。故に、よくきつくあたってしまう事があるそうだ。
「まだ、何も言ってないだろ?」
「あんたの思考はもう読めてんの!………もう……六花!帰るわよ?何やってんの?」
先ほどからずっとぎゃいぎゃい騒いでいた六花は、響蘿の声ではっと我に返り、一つ咳ばらいをして、ごつんと慧斗の頭を叩いてその場を去った。
「あ〜あ……響蘿いっちゃったじゃん!お前のせいだぞ!」
「は?何?……ま、俺達も帰るか。」
取り残された二人は、何も言わずに踵を返した。
ふと、慧斗の心に何かよぎったものがある。女性の、屈託なく笑った顔。
紅羅に気がつかれないようにぐっと唇を噛んだ慧斗だったが、紅羅にはしっかりと見えていた。そして、その思いも、手にとるように分かっていた。
慧斗には、六花達には話せない過去があった。
それは、この手で人の命を奪ったこと。
そのせいで、自分の大切な家族がみな、
………殺されたこと。