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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: +。*+。*+。*水鏡に映る月の光+。*+。*+ ( No.30 )
- 日時: 2011/01/24 20:04
- 名前: ユフィ ◆xPNP670Gfo (ID: Y8UB0pqT)
第三話 玉響にひびく玲瓏の如く
夢、を見ていた。ひどくか細く、悲しい。しかし、どこか強さを帯びた言の葉を。まるで鈴のような、玲瓏のあの懐かしい声を。
「 」
最後に聞いた大切な人の声。
宵の暗く澄み渡る闇の中でずっとその声が木霊する。
「………い……おい……おい!!」
はっと閉じていた瞼を開くと、そこには紅羅が顔をこわばらせて懸命に自分を起こそうとしているのが見て取れた。
気がつくと、全身汗に濡れて肌寒い感覚に陥られる。
「紅羅………」
「ったく…さっきからずっとうなされてたから、すごい焦ったぞ?」
「す、すまん」
素直に頭を下げる慧斗にいつもとは違う何かを感じた紅羅はあわてて問いただす。
「い、いや、それよりどうしたんだ?お前らしくもない……」
少しの沈黙の間、慧斗は表情を曇らせながら呟いた。
「夢を……見た。」
「夢?なんの?」
「六年前の……夢、だ。」
予想だにしていなかった答えに、紅羅はそうか、と相づちを打ってそれっきり黙りこんでしまった。
慧斗も一つ頷き、痛みをはらんだ目をして空を見上げる。
「もう、過ぎたことだ。」
慧斗が小さく、本当に小さな声で呟くように発せられた言葉はいささか震えを帯びていた。
あれから、もう六年。しかし、まだ終わっていない。そう頭の中で警鐘が鳴り続けているのを僅かながらも彼はしかと感じ取っていた。
「 私 を 信 じ て 」
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