ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: +。*+。*+。*水鏡に映る月の光+。*+。*+ ( No.9 )
日時: 2011/01/17 21:11
名前: ユフィ ◆xPNP670Gfo (ID: Y8UB0pqT)

プロローグ

日もとっぷり暮れて、ここ、京の都は夜の闇と静寂に包まれた。
そんな都の朱雀大路地で軽やかに疾走していく少女がいた。その傍らには一人の式神と呼ばれる少女が風にのってふわふわとのんびりしている。
この少女、名を六花。式神を響羅という。

「私の獲物〜!!!!」

大声を荒げる六花の前には、小さい小動物に似た異形・・・妖がいた。

「も〜!!なんたってこんなに速いのよ〜!」
「いや、仕方ないでしょ、あんた人間だし。」
「分かってるよ!・・・こうなったら・・・」

不自然ににやりと笑う少女を横目になにやら嫌な気配を感じた響羅は、思わず回れ右をしたくなったのを、必死に我慢して、少女に問うた。

「何を考えて・・・」
「あのさ、ちょっとあの異形っぽく変化(へんげ)して!」
「は??」

まったく六花の意図が掴めないまま響羅は、言われたとおりに兎(うさぎ)のような姿に変化した。ここでやらないと、あとで小言・・・いや、一発殴られるかも知れない・・・
そんなことをつらつら考えていた響羅だが、いきなり無造作に体を持ち上げられて、まさか・・・という考えがよぎる。
ただの思い込みだといいが・・・
しかし、残念ながらその予想は見事に的中した。

「とぉぉぉぉりゃぁぁぁ!!!!」

思いっきり式神を放り投げた六花は、後はよろしく〜!!と笑顔で叫んでぶんぶん手を振っている。

一方、ほおり投げられた響羅の方は、不機嫌そうに顔を歪めてあとで三刻は説教してやろうと心に決めながら妖の前に着陸する。

「・・・あんたのせいだから・・・」

さすがに一歩後ずさる妖に怒気をはらんだ声でうなった響羅は、元の姿に戻ると掌(てのひら)を真上に掲げて通力を集める。そして、淡く光る光玉を、それはもう渾身の力で妖に叩きつけた。
灰と化した妖はぼろぼろと跡形もなく消え去って、その場所が深くえぐられていた。

「・・・六花・・・」

ゆっくりと振り返った響羅の表情そのものは笑っているが、目が全く笑っていない。冗談抜きで本当に怖い。

「いやさ、あれは不可抗力だったんだよ!・・・まぁ、怪我もなかったし、これにて一件落着!」
「そういう問題じゃないでしょうがぁ!!!!」

大音量で怒鳴る響羅の声に思わず耳をふさいだ六花は苦笑して、帰るよ!と踵を返した。
これには怒るどころか呆れるばかりだ。
そっと嘆息した響羅は六花の後を早歩きで歩いていった。