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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: リディラテは微かに笑う 参照300!! ( No.87 )
- 日時: 2011/02/13 12:53
- 名前: とらばさみ ◆rL9ltCA.s2 (ID: cebg9jtM)
「………」
俺は冷たい寂寥感を身に纏いながら、ゆっくりと白い男に近づいてゆく。
そして腰につけてあったナイフをばれないように手に取る。
「近づいても無駄さ!無駄なのさ! 私には瞬間いど…」
白い男、いやただの馬鹿な男は俺が思い切り投げた短刀故に口を封じる事になる。
『俺が恐怖に陥っている間は瞬間移動が出来ない… 例えば…絶体絶命の時とか、だな。』
その言葉を信じ、俺は白い男の胸倉を掴みにどんどんと近づく。
「や、め…ふぉ………い…や………死に……た…き…ね…あ…」
白い男は毒を吐き捨てる様にナイフが刺さった血だらけの口を動かす。
しかし言葉とは思えないのを口にしながら、眼を引きつらせる。
「ジ・エンド 分かるな?」
ヒーローを気取ってみるのも悪くは無い。
俺は白い男を崖のすぐそばまで胸倉を掴みながら近寄らせると、手を離した。
「や…へ……しゅんか…いだ……ぺ…」
白い男はその言葉を最後に虚空へと姿を消した。
しかし今回は瞬間移動のせいではなく、奈落の底にへと落ちたのが理由だ。
グシャッ、と何かが潰れる鈍い音が遥か下から聞こえたのと同時に、血を求める獣が音の元凶にへと漂ってきた。
血眼になって血を求める獣、すなわちライカンの姿はとても滑稽で、なおかつグロテスクな描写を持つ代物だ。
「ひぎゃああああああああ…………!!」
誰かの断末魔が聞こえた。
崖の下を見ると、見るも無残にライカンは白い男を食い荒らす。
白い男は食われ続けられ、今では得体の知れない何か、と比喩するに相応しい姿となりつつある。
優越感に浸れるのは己だけだろう。
卑劣な勝利だった。
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