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Re: 五つの光、クリスティン ( No.2 )
日時: 2011/01/22 20:49
名前: 楓 ◆nxYfjsTN/c (ID: 3lmdTyLL)

その星の小さな島の小さな村。
これまた小さな家で一人の少女が息を引き取った。



「残念ですが、手の施しようがありません。」


白衣を着た、年60ほどの老医師が静かにつぶやいた。
老医師が目を落とす先には14、5歳ほどの少女がいた。

「マナ…っ」
2人の夫婦…、マナと呼ばれた少女の両親だろうか、
夫婦は悲しみのあまり小さな叫びを漏らしていた。


その横で肩を震わせて泣く少年がいた。
黒い髪、グリーンの目を持ち、背は160センチくらいだろうか。

彼はこのマナ、という少女の双子の兄、クリスティン・レクロイムである。

「なんで…っマナが…っ」

彼の悲痛な叫びもマナには届かない。
彼女の死因は私たち地球上の言葉で言う“がん”。

しかしこの星ではまだ治ることも、それが病気だとも知られていない。
ただ“悪魔に召された人”とかそんな風にしか思われていなかったのだ。

マナの葬儀は静かに行われ、埋葬された。


しかし、悲しみにくれたクリスティンは、毎晩も毎晩も泣き続けた。
「俺がしっかりしていれば…」
自分の無力さを知っていながらただひたすらに泣き続けた。