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Re: 五つの光、クリスティン ( No.3 )
日時: 2011/01/22 20:52
名前: 楓 ◆nxYfjsTN/c (ID: 3lmdTyLL)

マナが死んでから2ヶ月たったある日。


手伝いのため畑にでていたクリスティンに村の長老、
ディヴィーがたずねてきた。

ディヴィーは白く、長い髪を少し揺らしながらこう言った。


「クリスよ、お前マナを助けたくはないか?」


そのディヴィーの言葉を聞いてクリスティンは目の色を変えた。

ギラギラと太陽が照りつける畑で、クリスティンのグリーンの瞳も
太陽以上に輝いていた。


「助けたい!でも俺はどうすればいいんだよっ!?」

そのクリスティンとは対照的に、ディヴィーは静かな面持ちで
「この歌を知っているであろうよ」
と口ずさみだした。


「北に緑の勾玉あり そこには竜守りけり
西に蒼い宝玉あり そこには巨魚守りけり
東に希望の光あり そこには虎守りけり
南西黄金の輝き 南東恵みの物
それゆえ強し者守りけり
五つの光 一つにならんとするとき
すべての力がやどりけり」


歌が終わるとふっ…とため息をついた。


「それは…小さいときにばあ様が俺に歌ってくれた…?」

クリスティンはきょとんとした。何故そのようなことが
マナに関係があるのか、というように。



「これが、本当なら…どうだ」
ディヴィーの言葉に彼ははっと気づく。


「すべての…力」



そう。



すべての力を手に入れることができれば、何でもできるのだ。

それがたとえ生まれて死ぬ、という生物のルールに反することだとしても。


「どうすれば、どうすればいいんだっ!?」

ディヴィーは少し困惑した。

この純粋な少年にこのようなことを伝えてもいいものか、と。
しかし、そうはしていられないのも事実だ。


「厳しいぞ」


これは最後のクリスティンへの忠告でもあった。
しかし彼は一層気を奮い立たせたようだ。


「それでも、俺は行く」


そうディヴィーに向かっていったのだ。
日はもう西に傾きかけている。


「では、夕食の終わった刻に、わしの家に来なさい」
そういい、クリスティンに背を向けディヴィーは家路についた。



(さて、大きな災いが起こらなければいいのだがな。)
彼の背中はとてつもなく大きな“何か”をかかえているようだった。