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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: —未設定— ( No.1 )
- 日時: 2011/01/22 21:43
- 名前: 亜姫賭 ◆wYUuBm6d7Q (ID: zhJsOmgG)
プロローグ 紅き月と戻れぬ日々
暗闇の中、紅色をした月が場違いなほど明るく輝いている。
その月光に照らされた野を、紅の豪奢なドレスをまとった女性が歩い
ている。女性はふと立ち止まると、空を見上げて言った。
まるで、誰かに話しかけるように。
「今宵は、真に月が綺麗だな。
本当に・・・この世ならぬモノのようだ」
『この世ならぬモノのよう』
ならばそれは、何処の世界のものなのだろうか?
女性は独りそんなことを考え
「わらわは何をしているのじゃろうか・・・?」
そして、「くふふっ」と含み笑うと、またゆっくりと歩き出した。
紅色の月が場違いなほど明るく照らし出す野を。静かに、しかし
時折「くふふっ」と笑い声を洩らしながら。
楽しそうに
面白そうに
そして 溜息をつきながら月を眺め
「ああ なんて 奇麗な 綺麗な 紅い月。
狂おしいほどに紅く輝く月よ わらわは汝が羨ましいぞ・・・」
その時、一陣の風と共に背中に翼を生やした黒服の男が現れ、恭しく
跪くと言った。
「主人様、お客様がお見えになっております。即刻、亡き者にいたし
ましょうか。我が意思は主人様のもの。ご命令下さい」
頭を垂れる男を前に、女性は冷ややかな笑みを浮かべ、
「ふふふ、その必要はない。そいつに、我が屋敷にどうやって入り込
んだのか訊いてみてくれ。その後は——分かっているな?」
「かしこまりました」
男は静かに頷き、数回羽ばたくと夜空に消えた。
それを見送ると、口元に微笑をたたえて女性はまた歩きだした。
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