ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 蜘蛛ノ絲ニ絡ム蝶 ( No.2 )
日時: 2011/01/23 11:41
名前: 陰魔羅鬼 ◆ohBawF8LBM (ID: gwrG8cb2)

-零-  「愚か恋しや」


狩生学園は、お金持ち学校。名家のお嬢様、お坊ちゃまが通う、敷居の高い学園。

その中でも三大名家と呼ばれるのが、一年の紅林真理亜、来栖勇太、二年の藤間樹京の家柄。

紅林は海外にも会社を持つ高級ホテル経営、来栖も紅林と協力関係にある。
藤間は病院を経営、内科に外科にその他諸々、ジャンル問わず経営している。



「真理亜ー、遅刻するよ」

真理亜と僕の親は海外に単身赴任中。僕が真理亜を起こしに行かなければ、真理亜は必ず遅刻する。

「勇太君、おはよう」

だが、今日は意外にも真理亜も早起き。チャイムを鳴らせばすぐに出て来てくれた。
いつもはなかなか起きずに、何分もこの寒空の下真理亜を待っている。


「あれ、今日は早いね」

僕が驚いた様子で問いかけると真理亜はクスクス笑って

「全然早くないよ。だってもう8時じゃない」




「え?」

僕の家の時計は7時15分だった。そして15分に家を出て……。



「あっ!!」

考えられる可能性は一つ、時計が止まっていた。そして、それに気付かず寝坊。
真理亜は無情にも僕を見捨てて呑気に待っていた。


「走るよ!! 何でそんなに呑気なの!?」


僕らはお金持ち。世間様から見れば羨ましい限りだろう。でも、僕はあまり好きじゃない。
車で登校するのも、豪華な朝ご飯も、望めば手に入る物も。それは一時の幸福にすぎない。


「うわっ」

真理亜も同じ考え。あまり特別扱いは得意じゃないらしい。
 だから車で登校だってしないし、こうやって走るのも嫌がらない。


普通を望んでいる。特別扱いもない、普通に笑って過ごせる日々を。