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Re: I 第一章〜幻想夢花火〜 第九話更新 コメ求む!! ( No.48 )
日時: 2011/06/06 22:37
名前: 風(元;秋空  ◆jU80AwU6/. (ID: .cKA7lxF)
参照: 能登×フリーダ  是は百合?百合に見えるんでしょうか??

コメント下さった方々本当に有難う御座いますvv

紅蓮の流星様へ
最初の方,本音が素晴らしいです^^
物だなんて卑下なさらずに…
ハイクオリティだなんておこがましいですよ(苦笑

葵へ
え?飽きてないですよ……D灰の方ではEp3で凄く目立つと思いますよ?
次オリキャラ募集する事が有ると思うのでその時にでも^^
仙道さん……苗字が苦労人っぽいですよね♪
多分,アリスに絡まれ過ぎて遺書とか書いた経験が有りますよ!

アキラ様へ
読みに来て下さり有難う御座います♪
殺し……大好きですか?趣味悪いですね?
えっ,書いてる人に言われたくないって?私は大嫌いですよ殺し……道徳的にも視覚的にも受付けない……
さて,是は本気で言っている事なんでしょうか?


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜I〜〜〜〜〜〜〜〜〜

第一章:幻想夢花火

第9話「能登潤ラヴァーズ」

微笑むフリーダを見詰ながら能登は過去の記憶を思い出そと瞑目する。
鼻を突くような血の臭いにも最初の頃と比べれば慣れた物だ。
其れが両親の死臭だと分っていてもそれ程気にはならない。
元々は彼等に情は殆ど無かったから。
フリーだが来たのは能登が両親らの死体を眺め続けて数時間後の事だった。

彼女の家の近隣の住民達は彼女の両親が死んだ事など全く分りはしない。
能登に殺され大きな悲鳴を上げた両親の声も能登の所属する組織の戦士の能力により外には届かない様に完全に遮蔽されていた。
そして,この死骸も血痕等も組織の者達が全て隠蔽するだろう。
当然,両親の死も上手い言い訳とその言い訳の通じるシチュエーションが造られる。
詰り,能登潤に家族殺しの汚名が着せられる事は無いと言う事だ。

「ねぇ,潤?初めて会った時の事覚えてまして?」

彼女と出会ってからの日々はとても濃密で
経験したことの無い事の連続で体が心が可笑しくなりそうなほどだったが明確に覚えている。
如何に密度の高い日々を送ったと言っても彼女と出会って未だ三週間足らずなのだ。
それが,逆に驚きだな……そう,額に手を当てて微苦笑を浮かべる。

夜だった————
何時も通り孤独で父と母の気紛れを畏れる長い夜を能登は暮らしていた。
その日も何時も通りそんな夜が過ぎて行くと彼女は思っていた。
だが,違った。
鮮烈だった——唯,普通に何時も見ているサイトに行こうとしてクリックした。
そしてら突然,質問が始まって……何故か止める気になれなかったのを覚えている。

「殺人をしたい……」自分の中にそんな強烈な願望が有った事を今更ながらに理解する。
何人も殺してきた。他の同期の者達より遥に大勢を殺してきた。


「覚えてるよ?鮮明に……私は迷い無く殺人をしたいって答えた」

能登は一頻り一日目の夜を思い出して言葉を発した。
迷い無く,殺戮の道に手を染める覚悟をしたと……

「えぇ……でも,貴女は本当はご両親を殺したかっただけだったのよね?
でも,家族や身内を殺すには一定数以上の人間を殺さなければならないと言うルールが有った」

「えぇ,目に涙を浮かべながら嗚咽に歪んだ声を出して……」

其れを聞いてフリーダは目を細める。
彼女と付き合っている内にフリーダは何故,大人しい性格の能登が殺戮に興味を示したのかふと疑問に思った。
問うと能登は自分の人生をぶち壊しにした人に復讐するんだと真摯な瞳で答えた。
「その復讐の対象はだれなのですか?」更に対象について問うと彼女は家族だと言った。

その瞬間,フリーダは悟った。
彼女は多くの命を奪うタイプの人間じゃない……目標である一つの命を奪えれば良いと思っているんだと。
身内等で無ければ其れも通る。
対象一人だけ殺して後は殺人の依頼を拒否し続ければ良い。
だが,能登の場合は復讐の対象が家族だった。
近縁の者の殺害をするには組織にはルールが有る。

ある一定以上の数の人間を殺さなければならないと言うルールだ。
それは,人の命を殺める事に慣らす為だと言われている。
身内と全く面識の無い人間の命を殺めるのとは訳が違うと言う事だろう。
然し,彼女にとっては其れが足枷でしか無いのではないかとフリーダは思っていた。

事実,能登が人を殺す時の顔は苦痛に歪んでいて夜も涙を流しながら眠るのだ。
両親を殺す事の許可をフリーダが上司に申請できる様になるのは三十人以上能登が人を殺してからだった。
三十人以上人を殺しそして,両親を殺せば彼女の目的は達成だ。
だが,その目標を達成できるのか……三十人もの罪も無い恨みも無い人間を優しい彼女が殺せるのか。
涙を流しながら一日一人から二人ずつ毎日殺し続け遂に此処に漕ぎ着けた能登を彼女は心の底から祝福していた。

「やったね……本当に」
「うん,あだ……しやっだよ……今になっで……やっと心に幸福が降りてきた気がして————」

「潤……もう,殺しは止めて良いんですよ?」

暫くフリーダは俯き顎に手を当て思案していた。
ふと能登に顔を向け能登の表情の変化に気付く。
今までの苦痛が悲しみが収束し解放された……そんな感じの安堵と幸福に満ちた笑みだ。
フリーダの口から自然に祝福の言葉が出る。
能登の頬から一筋の涙が流れる。本来は綺麗な顔をクシャクシャに歪めて声を震えさせる。
そんあ能登の震える体を抱き寄せフリーダはもう辛い思いはしなくて良いんだよと優しく言った。


——その瞬間だった
唐突に,両親を殺した時の事を能登は思い出す。
両親は相変わらず薬物に溺れネットに集中している風情だった。
直ぐ近くで大事件が起きて周りの人間達は非難するかどうかで揉めていると言うのに滑稽な事だ。

「あら,どうしたの?あんた……何か用?面倒な事ならあんたで何とかしなさいよね?」

数時間前だ。
父親と母親が居る部屋へ武器だけを携え姿を消さずに向かった。
能登の武器は吹き矢,傍目から見れば唯の木の棒に見えるだろう。
余り顔を合わせる事も無い娘が部屋に入ってきたというのに全く驚いた風情も無く母が接してくる。
その言葉からは邪魔だからさっさと消えてくれと言う心情が滲み出ていた。

能登は唇を噛締め出来る限り痛め付けて殺す事を誓う。
そして,吹き矢を放つ。
放った吹き矢は母の胸部左側にそして,父の右腕の二の腕の辺りに命中する。
針で刺されたような鋭い痛みに二人は小さく呻く。

「ねぇ?痛い……母さん父さん痛い??余り……痛く無いよね?」

「何を遣った潤!?」

二人が呻く様を繁々と見詰め能登は二人に痛いかと尋ねる。
然し,自らの武器がその放たれる矢の力だけで人を殺められる程の
殺傷力を持っていない事を知っている能登は今は大して痛くないよなと一人ゴチる。
そんな能登に対して父は能登を威嚇する様な図太い声で何をしたと問い掛けて来る。
そんな父に対して能登は第二射を発射する。その矢は父の腹部へと命中する。

「ヒッ!?何……何なの?体が————熱い?」

「此処からだよ……少しずつ少しずつ悶絶して這い蹲って泣き叫んで…………
死にたくないと嘆願して……あたしを神と崇める様に死んで行け」

父が腹部の痛みに呻くとほぼ同時に母が呻き声を上げる。
突然,体が燃える様に熱くなって行くのを母は感じ始めていた。
能登の吹き矢の毒には同じ毒でも遅効性の毒と即効性の毒の二種類が有る。
父と母に放った毒は同じ種類の毒だが母の毒の方が即効性だ。
然し,二発目の矢を受けた父も遂に熱さに苦悶の声を上げる。

其れを一瞥し能登は普段の抑圧されていた自分を曝け出すように高らかに宣言する。
お前等の罪を自らの痛みを呪いながら苦悶の中に死んで逝けと……
その時の能登は紛れも無く愉悦に歪んでいた。
そんな能登の言葉を聞いた父が反論する。

「こんな事をして貴様はどうするん……だ!?一時の快楽など人生の中で何の意味も無い!!」

「黙れ……屑が!」

「ガッ!!」

父として娘の未来を案じている訳では決して無い。
能登にこんな事をしたら警察が黙っていないぞ…
直ぐにこんな事はばれるぞと脅し解毒剤でも貰って助かりたいと言う腹だ。

見え透いた本心に忌々しげに舌打ちして能登は父のすっかり緩んだ腹部を鬼の様な形相で蹴った。
ドスンと音がして父は血を吐き出しゴロゴロと悶絶しながら転がり回った。
転がり回り遂にはその日食べた物を吐瀉する。

「聞いて,母さん……父さん,私……貴方達の事を親だなんて思ったこと無かった
唯,只管憎かった。今日と言う日に本当に感謝してるの♪」

「ゲボォ……ゴボオォォッ!!たっ……だずげ…………デェ』

毒の効果が遂には浸透して行き両親は言葉もまともに発する事が出来なくなってきている。
能登はのた打ち回り机に有った物を薙倒しパソコンのコードに足を絡めパソコンの載っている台を壊し泣き叫ぶ両親を目を細めて見詰る。
様を見ろと言う感情と同時に何で自分はこんな残酷な事をやっているのだろうと言う感覚を覚える。
然し,今迄彼等にやられて来た仕打ちを思い出すと許せる理由は全く無かった。
自分は努力していた。それに引き換え能登の両親は自らの娘である能登に仕事を強要し甘い汁を吸い続けた。

苦痛に耐えられない母は常備している麻薬に頼ろうと転がりながら戸棚の方へと転がり出す。
長時間苦しんで貰おうと死ぬのに時間の掛かる毒を選んであげた性か腹立たしい行動もしてくれると其の行動に能登の溜飲は下る。
能登は鈍間な亀と転がり回る母を失笑し棚へと先回りして母の麻薬を取り出し自らの服のポケットへと入れた。

そして今や白眼を向き地の泡を吹き出す母の視線に合せしゃがみ鬱屈していた思いの内を全て吐き出す。
良い思い出など無かった……有ったとしても目の前の欲望の亡者達の仕打ちに完全に打ち消される程度の小さな物だ。
苦しみ唯,助けてと母は繰り返す。
既に,能登の言葉は聞こえて居ないのだろう。

能登は嘆息して母のズボンを掴む手を振り解く。振り解くと腕が既に脆くなっているのか母の体から腕が捥ぎ取られた。
派手に血が噴出する訳ではなくドロッと血が流れ出す。
一層激しく両親はのた打ち回り遂には四肢が砕け始め皮膚が裂傷し血が吹き出て行く。
目玉は飛び出て舌の色は青く変色している。
最早人ではない。

ジタバタと体を動かすのも遂には止め沈黙が過った。
父とは母其の後何をしても二度と目を覚まさなかった。
命を鎖した事を理解して能登は瞑目する。
力を行使している時は是でやっとこの化物たちと離別出来ると嬉々としていた。
然し,そう完全に動かなくなった……骸と化した2人を見ていると
何か言い知れない一抹の寂しさが胸中を巡り涙が流れていった。

子は親を愛すると言う生命の本能がそうさせるのだろうか……
正直鬱陶しいと思い能登は涙を拭う。

「何でだ……何で泣くんだ私!?私の馬鹿!!」

思わず感極まり地団太を踏み奇声を上げる。
組織の力により外に声は漏れない。
彼女は喉が擦り切れるほどの声を上げ続けた。恐らくは人生の中で最も大きな声を発しただろう。
一頻り声を出しハァハァと息を整えようとするが喉に相当負担が掛かっていたのかヒューヒューと言う音がする。
喉が傷付いたのか僅かに血の鉄臭さが喉を伝う。

能登は疲れて壁に寄り掛かり倒れ込んだ。


              ————何でだ?何で……辛いんだ??


彼女は覚悟をしていた。
ずっと昔から両親が憎かった——力を手に入れ是でこの二人を我が手で粛清出来ると喜んでいた。
そんな唯,憎悪しか感じない二人を殺害出来て嬉しい筈なのに涙が出る。
能登は理解できず放心状態となった。


フリーダが慰めに現れたのはそれから,数時間が過ぎての事だった。




「どうかしましたか潤?」
「うん,あたし……フリーダのお陰で此処まで来れたと思ってるんだ」

「それはどうも♪」

自分の言葉に黙ったままの能登を怪訝な表情で見詰めフリーダが能登の名前を呼ぶ。
能登はふと我に帰り先程までの会話を思い出して感謝の言葉を述べる。
其れに対してフリーダは照れ臭そうに顔を赤らめる。
能登は素直に感謝していた。
挫けそうに成った時にフリーダは何時も傍に居て言葉を掛けてくれた。
学校生活が上手く行かないと言う愚痴に対しても打開案を示してくれた。

彼女はフリーダに幾つもの素直な感謝が有った。


「だから,あたし貴方を一人にしない……」
「潤?」

「あたし達,この戦いが終結するまでずっと一緒だよ」

自身はフリーダに寄り添ってばかりなのに
彼女から貰った恩を一つも返さないと言うのは虫が良いのではないかと能登は思ったのだ。
本当は殺戮を繰り返すのは嫌だ……

幾ら他者の命を奪っても命を奪うと言う行為を平気で行える様になることは無いだろう。
それでも能登は彼女を一人にしたくなかった。
何時も彼女は冷たい目をしている。
誰と話していても余り楽しそうではない。
然し,能登にだけは笑顔を見せる。
その笑顔に偽りの影は無い。

だから,一人で有る事を苦しむ彼女を一人にしたくないと能登は思った。
そんな能登の言葉にフリーダは唯小さく彼女の名を呼ぶ事しか出来なかった。
そして,能登は真摯な瞳でフリーダを見詰め最後まで戦い抜く事を決意する。
 


                   ______有難う……嬉しいよ



能登の顔には雲一つほどの翳りも無く本気である事がフリーダの心には痛い程に伝わる。
フリーダは体を震わせて涙を浮かべて感謝の念を口にした。

能登はフリーダの綺麗な笑顔を見て
自分は若しかして何かとんでもない事を言ったのではないかと顔を赤らめる。
そんな顔を赤らめる能登の耳元に唇を当ててフリーダは小さな然し色っぽい声で言う。

「私の事も良いですが藍沢君も忘れずに♪」

「フリーダ!!」


冷かしの様な其の言葉は能登を更に赤面させた。
然し,フリーダにとって能登が大きな存在である様に能登にとって藍沢が大きな存在で有る事も事実だ。
彼女は其れを理解している。

フリーダが能登を特別視する理由は昔の自分に似ていたからと言う理由だ。
だから能登の心が良く分る。
親が腐っているが故に回りからも敬遠され友も造れず親とは無論良好な関係を造れない。
孤独は苦しい物だと理解している。
残念ながら恐らくは能登の同性であるフリーダには能登の孤独を癒すにも限界が有るだろう。
フリーダはそう考えて藍沢の名を口にしたのだった……

それから暫く経って疲れたのか能登はフリーダに寄り掛かりスースーと小さな寝息を上げる。
フリーダは慈しむような瞳で能登を見詰めこんな所で寝るのは衛星情欲無いと考え能登を抱きかかえ
二階の能登の部屋へと彼女を運びベットに寝かせる。
組織の戦士は人を殺す事により身体能力も上がる。其れこそ,上位ともなれば見た目からは想像も付かない怪力揃いだ。
当然,自分と同程度の体重の人間など軽々と運ぶ事が出来る。

能登をベットに運び布団を掛けてフリーダは一息つきカーテンを明け月を見る。
綺麗な満月だ。何だか,二人の今後を祝福している様な気がしてフリーダは祈りを捧げるのだった。
組織に身を置くとなれば,是からも彼女の道程は平坦ではない。
その事を案じ,責めて小さな幸せが能登の中に有り続ける事を————

                     ∞END∞


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