ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: ピリオドをください。 ( No.13 )
日時: 2011/01/29 15:59
名前: AW工作員 (ID: 3JtB6P.q)

彼は理想の恋人だった。
その日までは。

ただ街をふらつく。
行くあては無い。
それでも、楽しかった。

「なぁ。」

突然呼び止められた。
何だろう。

振り返ってみると、視界は暗かった。

抱きしめられたのだ。

「…え…?」

思わず頬が真っ赤になる私。

だが、彼は私を抱きしめたまま車道に歩き出す。

(…ちょ、ちょっと引かれ…)

車道に踏み出したとしたときに、彼は私を突き放した。

「さようなら」

ブレーキ音が迫り、
私は宙に放り投げられる。

ー夢を見ているのだろうか。

男女の声が聞こえる。

「なぁんだ。失敗しちゃったんだ…」

「あんなに激しく打ち付けられたのに、生きてるなんてしぶとい奴だな」

「これでアタシたちやっと付き合えたはずなのに」

目を開いてみると、
見知らぬ女と彼が私をのぞき込んでいた。

あの優しい彼じゃなかった。

「あれ〜。起きちゃったか」

残忍な笑みを浮かべている。

私は状況を飲み込めなかったが、一つだけ訊きたいことがあった。

その人誰、と。

だが、訊く前に首に痛みを感じた。

「今度こそ、さよならだ。」