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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 異界亂世 ( No.2 )
- 日時: 2011/01/28 21:55
- 名前: 陰魔羅鬼 ◆ohBawF8LBM (ID: gwrG8cb2)
-零- 「般若の面、華の貌」
この世界では女は貴重な存在。愛に育てられ、愛を孕み、愛を産み落とす存在。
そこには愛が満ちていて、不自由など何一つない。
良い女性になる為の稽古は苦しくとも、それに見合う生活が送られる。
そんな“女の運命”を投げ出した女がいる。
自ら血の飛び散る戦場に立つことを望み、剣戟の音を聞きながら生きる。
返り血で染めてきた顔は恐ろしいほど美しく、その剣の腕もかなりのもの。男であれば……。と誰もが望んだ。
それ故、彼女は女と言う事を仲間以外には隠し、男として生きている。
女としての全ての運命を断ち切るため───。
「北国のアガレスが攻め入ると言う情報を南国のオロバスから教わった」
ここは東国。東国と西国は彼女が治めており、西国は旦那の方が治めている。
そう、彼女こそが女の運命を捨てた、グラーシャ・ラボラス。華の貌を隠し、般若の面を被る女。
「恐らくオロバスは我らと同盟を結ぶつもりだ」
その堂々たる立ち振る舞いは男そのもの。一見で女と解る者はいなかった。
「どうする?」
戦場で大声を張り上げ、すっかり枯れてしまった声。だが、鈴のような美しさを持つ声でもある。
「いいんじゃねーの? 困った時はお互い様。だろ?」
大して考えた様子もなくそう告げるのはヴィネア・バエル。
西東国を治めるラボラス軍の中で(外見は)最年少である。
「あのね、今は乱世なの。困った時はお互い様、仲良くしましょうねーって言う訳にもいかないんだよ」
ヴィネアの浅墓さに呆れた様に溜息を吐くのはボーティス・キュルソン。大変楽天家である。
「……旦那様からの連絡を待つとするか」
こちらでは定まりそうもない。旦那様等のご意見によって私たちの行動も変わる。
旦那様からの連絡を待つ間も、後ろの方で二人が口喧嘩をしていて五月蠅い。
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