ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 「死 人 花」 ( No.2 )
- 日時: 2011/01/28 20:13
- 名前: 霧雨柚乃 (ID: 3iZuTr1t)
第一章 死人花
「ばーーーーばーーーーさーーーーま!!!!智影連れてきたよ!」
すごいデカイ声で杏奈が言う。というか怒鳴る。
すかさず「五月蝿い」と声が返ってきた。
そして、ドタドタ走る音がして、少年が一人玄関に来た。
「五月蝿いよ。何かの嫌がらせ?ボク今宿題してるんだけど」
すごく綺麗な顔をした少年が、顔をしかめて静かに言った。
杏奈の弟・朝凪祐介だ。
頭がすごく良くて、中学は地元の有名進学校の篠原中を受験するらしい。
中二のオレより頭良いんだっけ。
「ごめんごめん。知らなかったんだよ」
「あっそ。姉ちゃんが智影君を迎えに行く前からやってたんだけどね」
「そうだっけ・・・」
「そうだよ。あ、智影君久しぶり。麦茶を婆様が用意してくれてるよ。飲む?」
「うん」
家に上がる。
ばあちゃんは台所で本当に麦茶を用意してくれていた。
「いらっしゃい。待っとったよ智影」
「久しぶりばあちゃん。麦茶飲んで良い?」
「当たり前やろ」
穏やかな笑顔でばあちゃんが言う。
杏奈と祐介もサッとコップを持って麦茶を飲む。
すごい勢いだ。
勿論オレもだけど。
「そんな一気飲みせんでもええよ。まだあるんやから」
ニコニコしながらばあちゃんが言った。
でも多分誰も聞いてない気がする。
飲み終わるとコップを流しに持っていく。
杏奈は二杯目を自分で注ぎ始めた。
「ところで智影君、お土産は?」
祐介が黒い笑顔で言った。
「ちゃんと買ってきたよ!そういうと思って」
手に持っていたスポーツバックから小さい袋を取り出して渡す。
中にはラノベが数冊入っている。
祐介はラノベが大好きなのだ。
その他の大きな包みはばあちゃんに渡す。
「はい!ばあちゃん」
「ありがとう。そんな気ぃ使わへんでもええのに」
中身はお饅頭やら羊羹やら・・・ばあちゃんが好きなものばかりだ。
最後の袋は杏奈に渡す。
「杏奈のはこれ」
「ありがと!」
中身は眼鏡だ。
杏奈は眼鏡が大好き(?)で、大量に持っている。
その日の気分によって眼鏡の色と形が違うらしい。
どの眼鏡をしてる杏奈も変わらず可愛いけどな。
杏奈は早速袋を開けて中身を取り出した。
嬉しそうだから良かった!
祐介も早速ラノベを読み始めた。
ばあちゃんは新しいコップを出して麦茶を注いでいた。
変わらない笑顔をうかべて。