ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 僕たちの求めた絶望色〜赤・白・黒〜参照100突破!感謝です! ( No.31 )
- 日時: 2011/12/26 14:14
- 名前: 色茱萸 (ID: lkF9UhzL)
第二話
あの時…思った。
悲劇は突然やってくるものだ、と…————
不意にシンと静まり返ったリビングに
チャイムの無機質な音が鳴り響いた。
チャイムが鳴ったにもかかわらず、
母と私が出たがらないのを見兼ねた父が
インターホン越しに対応した。
「…はい、何でしょう?」
父も夜遅くだったので不審に思ったのだろう。
疑うように相手に尋ねた。
『夜分遅くにすみません。相川様宛てにお荷物をお預かりしているのですが…』
「宅配便ですか。分かりました、今行きます」
最近は夜遅くの宅配もあるらしい。
どうせなら昼間のうちに仕事を片付けておいてほしいものだ。
ブツブツ文句を言いながらも判子を引き出しから出すと、父は玄関へ向かった。
…幼い私と呑気な母には、わからなかった。この時間の訪問客とは
招かれざる客だということを…
いくらなんでも11時という良い子の寝る時間に宅急便だなんて
一般常識からすでに外れている。
こちら側が通販か何かでその時間に設定をしていなければ、11時に窺うなんて非常識すぎる。
その不自然さに気づいていれば、
…父はあの時、あんな目に合わずに済んだかもしれない。いや、
合わなかったんだ、絶対に…
父の帰りは遅かった。
印鑑を押して荷物を受け取って帰ってくるだけなのだから
そう時間はかからないだろうに、
父の帰りは、やけに遅かった。
10分程の時が過ぎ、母もさすがに変に思ったのだろう。
いそいそと足早に玄関に向かった。
私は只々怖くて震えていた…何故だかわからないが、
子供の勘が必死に警告ベルを鳴らしているように思えた。
幼かった私は、お気に入りのウサギのぬいぐるみに、
落ち着かない気持ちでぎゅうっとしがみついた。
…その瞬間だった。
母の絶叫が聞こえたのは…————
「や゛ぁぁぁあッ!!あ…あ…ッ!あなたッ?!
どうしたのあなたぁぁああッ!」
叫び声が聞こえた瞬間、私の心臓は一気に凍りついた。
…もちろん比喩にすぎないが。
恐る恐る玄関に出ると、目に飛び込んできたのは、
仰向けに倒れた父の姿と、それを必死で起こそうとしている母の姿だった。
そして…————
母の背後に迫る、黒い影………
「ママ…ッ?!うし…ッ!!!」
うしろ!と叫ぼうとしたが遅かった。
私は首を強い力で殴られ、
そこからの記憶をなくした。