ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 僕たちの求めた絶望色〜赤・白・黒〜参照100突破!感謝です! ( No.34 )
- 日時: 2011/02/02 18:49
- 名前: 色茱萸 (ID: nnVHFXAR)
第三話
そして————
今の状態……束縛状態になっているという訳だ。
「やだ…いや…助けて……助けてぇぇぇぇぇ!!!」
「美紗ッ!静かになさい!」
迫り来る恐怖と不安で泣きじゃくる私に母は
大声で怒鳴った。
「ッ!!!」
その声に私はビクリと肩を震わせる。
「…父親に、会いたいですか?」
「?!」
不意に先程倉庫へ入ってきた男———
私たちをこのようにした犯人が
静かな声で話しかけてきた。
いきなり話しかけられたのと
その短いけれど、重要な男の言葉に私たちは驚いた。
幼い私はその後の恐怖も知らず、
神でも見るような瞳で男を見上げ、叫んだ。
「パパ!?パパに会わせてくれるの?!!会わせて!
会わせてよ!!パパァァァ!!!」
泣き叫ぶ私を見て、男は何を思ったのだろう…
哀れ、とでも思ってこんなことをしたのか。
…いや、違う。
もし男にそんな感情が少しでもあったのなら…
私は………————
男は静かに、
「いいですよ、会わせてあげますよ…」
そう言って私の目隠しを取ろうとした。
その会話と気配から母は何かを感じたのだろう。
私の目隠しが取られる前に、大声で男に叫んでいた。
「あなた美紗に何するつもりなの!?
美紗には手を出さないで!!!目隠しも
外さなくて結構よ!!!」
「…美紗ちゃんは…会いたいって言ってるじゃないですか…」
消え入りそうに小さな声で男は母に逆らう。
どこか違和感のある会話だったが、
その時の私の耳には あまり入ってはこなかった。
それほど余裕がなかったせいなのかもしれない。
私は早く目隠しを取って欲しくてうずうずしていた。
それに気づいた男は、再び私の目隠し外しにとりかかる。
母が止めるのも聞かずに……
ようやく瞳を覆っていた布が外れ、
少しの開放感に浸っていた私に男が言う。
「ほら、美紗ちゃんの会いたがっていた『パパ』ですよ…」
私はこの後、初めて
『運命』というものを
呪った………—————