ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 僕たちの求めた絶望色〜赤・白・黒〜 ( No.44 )
日時: 2011/02/07 19:58
名前: 色茱萸 (ID: wH27GNaO)

第五話

「ママ…好きですか?」

漸く吐き気が収まりかけた私に、

男は不思議な疑問をぶつけてきた。

「…好きだよ…当たり前でしょ?…なんでこんなこと…するのよぉッ…パパを…パパを返せぇぇぇぇ!!!!」

泣き叫びながら、小さい足で男の足を思いっきり蹴る。

足首は縛られているので、

あまり強くは蹴れないが。

「随分と強気な子供に育ったんですね。」

ちらりと母を見ながら私に言う。

「…美紗?何が起きているの?」

「…ママ…!…ッ!!!??」

「美紗?どうしッ…!!?」

ゴッと鈍い音と共に血飛沫が舞う。

男は私が母の質問に答える前に

母の後頭部を鉄の塊のような物で殴りつけた。

「ひッ!!!!」

一瞬男が、眉を歪めた…ような気がした。

息を呑む私に、血まみれの顔を向けると

静かに男は微笑んだ。

そして足音もたてずに、ゆっくりと

一歩一歩確実に私に近づいてくる。


男との距離


わずか1.5m…


————殺される————

そう思った瞬間、男はさらに私との距離を縮めて

血まみれの手をこちらに伸ばす…

           くしゃッ

男の大きな手は

私の命を消すことはなく、

くしゃりと頭を撫でるだけだった。

そして静かに、

「…ごめんな…」

そう呟いた。

「……?」

一瞬何が起きたのか、

理解出来ずにいた私に男は告げる。


「ディアーブル」


「?」


「…覚えておきなさい。大きくなったらまた、
私に復讐をしたいと思うでしょう。
…そのときにきっと…役に立つはずですから。」


「…ディアー…ブル?」


「悪魔の意を持つ言葉です。…ではまた、
会えることを…」



そう言い残して、男は静かに倉庫を去っていった…————

涙を一筋


頬に伝わせながら………