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Re: 僕たちの求めた絶望色〜赤・白・黒〜 ( No.61 )
日時: 2011/02/21 20:20
名前: 色茱萸 (ID: wJNgr93.)

第九話

この血がいつの日か…


闇の中、血の海で思い耽っていた私は

バッグの中を再び漁る。


————あぁ、あったあった…————


既に亡くなってしまっている男を

私は無表情でちらりと見遣る。

そしてバッグの中から、ノコギリのような

小さな刃物を取り出すと

男の腕へ 当てる。


そのまま刃先を押し付け、切込みを入れた後

一気に勢いよく引く。

死後まもない男の腕からは

綺麗な紅の色が噴き出す。

あの時の両親と同じ、

いつ見ても変わらない 儚くって、切ない色だ…


私は両親の仇をとるため、

ディアーブルを殺してやると決めていた。

けれどその肝心のディアーブル本人の顔を

私は知らないのだ。

故にこうして男性を夜中に見つけては

人の目を盗み、次々と消していっている。


これが私の趣味…けれど、

決して楽しいものじゃない…


なんでなんだろう。


心が…胸が痛いんだ。


消していく度、


あぁ、この人はあいつじゃないって…


なぜだか確信してしまう。


両親の仇をとるためなら


全く苦痛ではないはずなのに


胸が…張り裂けそうだ…


自分の罪の深さに気づくのは…


一体いつなのだろう。


早く…早く気づけ!バカ…っ


————————————————————————————————

私はその場を去ろうとして、

凶器を全てバッグにしまうと

血だらけのまま

その場を後にした。



しかし…

毎度思うことがある。

どうしてこんなに派手に犯行を行っているにも

関わらず、

誰も気がつかない…?




この時の私はまだ、

私のやってしまった罪を

必死になって隠してくれている人がいることを

全く知らなかった……いや。

知らせてくれなかったのだ。



『春ちゃん』………—————