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Re: 僕たちの求めた絶望色〜赤・白・黒〜 ( No.63 )
日時: 2011/02/24 23:33
名前: 色茱萸 (ID: wJNgr93.)

第十話


次の日も

その、次の日も…

私は罪もない人たちを殺めていく。

ある日は年若な男の子。

ある日はよぼよぼとした頼りない老人…


何人殺しても、何十人泣かしても

私は何も感じることはない。

ただ時と共に

自らの手が、体が、全てが…

罪に汚れていくだけで………————


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今日もまたいつもと変わらない日常…に

なるはずだった。


その日は夜中の0:30頃に施設を出た。

今にも泣き出しそうな空模様は

私の心に住む天使と

同じ表情で私を迎えた。


そしてAM1:00頃。

コンビニに到着した私は

いつものように裏口で『ターゲット』を待ち構えていた。

するとコンビニの入り口の方から

ザクザクと砂利道を歩いてくる音が聞こえてきた。

(来た…!)

さっそく足音でターゲットを確認した私は

血に染まったハンドバッグをそっと

自身の方へ寄せる。


「ねぇ。あなたって相川 美紗ちゃん?」

「ひッ!!!!」


突然肩を触るトンっとした軽い感触と

高く、そして透き通った女の声に

私は思わずみっともない悲鳴を上げてしまった。

「そんなに驚かないでよ」

「…あなた、誰?」

振り向くと女の人はにっこりと笑いながら私を見下ろしていた。

見た目からして私と同年齢だろう。

綺麗な栗色の髪、透き通った声、ぱっちりとした形の良い瞳…

どれをとっても人形のように完璧な彼女に

一瞬私は怯んでしまった。

恐る恐るだが誰なのかを尋ねてみると

以外にもあっさりとした答えが返った来た。


「ん?私?私は風月 春。年は十五で趣味は…」

「名前だけでいいわよ」

「あ、そう?…ところでさぁ」

「?何よ」

「単刀直入に聞くんだけど、あんた年いくつ?」

「…は?」

「いやだからいくつって…」

「…?十五だけど…?」


単刀直入とか言いながら彼女…

『風月 春』が聞いてきた質問は

あまりにもつまらない事だった。

不思議がりながらも私は答えると

彼女から小さな溜息が聞こえてきた。

「はぁ〜…なんだぁ、年下じゃないんだね。つまんないなぁ…」

「は!?何それ!どういう意味よ!」

「いや、要するに虐め甲斐がないな〜と。」

「………(要しすぎて意味分かんないんだけども)」

「黙んないでよ。ホント、噂以上に失礼な子だね」

「…噂?……っ!!!噂が…私の噂が流れてるの!?どうしてっ!」

私は彼女に掴みかからん勢いで

その「噂以上に」の一言について問う。

「落ち着いてってば…私と私の父親くらいしか、あんたのこと知らないからさ。噂ってのはその父親から聞いたってだけ。世間一般には広まってないよ?」

「ほ…んとに?」

「嘘吐いてどうすんだよ」

「…じゃあ、あなたは知ってるのね?私のこと…
私が今までしてきた悪事を……」

「まぁ、一応…ね。でも誰かにバラそうなんてことは考えてないから」


その彼女の言葉にすっかり脱力してしまった私は

ふぅ…と小さく安堵の息を吐いた。

「よか…った…っ!」


「ねぇ、あんたの名前教えてよ。さっきから一方的だからさ」

「名前…美紗よ……相川美紗…ていうかあなた私の名前知ってたじゃない…どうして…」

「あ〜…それも父親から聞いたんだ」

「何であなたの親が私の名前を…?」

「私も詳しくは知らないんだよね。ただここのコンビニで
毎日のように殺人が起きてるっていうからさ。覗いてみたら私と同じくらいの女の子で…正直びっくりした」

彼女の一語一句がよく理解できなかった。

特に父親の話のことについては

どこか引っかかりを覚えたが、

それでもなにがなんやらさっぱりだった。



…彼女の登場で


私の人生が、どれほど素晴らしいものになったのだろう…


今の私には


その後の人生のことを


考える余裕すらなくて


ひたすらに彼女を


敵にまわすだけだった………———————