ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 僕たちの求めた絶望色〜赤・白・黒〜コメください>< ( No.65 )
- 日時: 2011/02/28 21:52
- 名前: 愛鬼茱萸 (ID: wJNgr93.)
第十一話
暫しの沈黙が続いた後
私は「春」と名乗る彼女に思い切って
先程頭に浮かんで消えた
小さくて大きな疑問をぶつけた。
「…あなたの父親は…一体何者なの?」
「ん?親父は…ほんと、私にも意味不明な奴でさ。
…あんたと大分関係があるみたいだけど?」
「え?私…あなたのお父さんなんて知ってるどころか
会ったことすらないわよ?」
「そう…じゃあさ。」
続きを言う瞬間に
彼女はずいっとこちらへ身を乗り出してくる。
「…『ディアーブル』って 聞き覚えない?」
「ッ!!!!???」
彼女の言葉に私は心臓が一瞬
止まったような気がした。
何故?何故彼女の話の中に
アイツの名前が…ディアーブルが出てくるの…?
「…聞き覚えがあるようね」
すっかり硬直してしまった私に、彼女がそっと言う。
「……ッ」
「ねぇ、よかったら親父のこと
教えてくれない?娘なのに知らないなんてなんだか嫌なんだよね」
「…あなたの父親…ディアーブルは…
私の…わたし、の…ッ両親の仇よぉ!!!」
一番聞かれたくなかったことを聞かれたためか
私は今まで我慢していたアイツへ対する怒りを
その娘である彼女へと爆発させてしまった。
「!!?…そう、なんだ。親父が…あんたの両親を…」
「そうよ…あまり驚かないのね。あんた達さえいなければ
私は今頃幸せに暮らしてたのよ…?」
そう言って私はハンドバッグを引き寄せる。
ナイフを一本取りだして
すっと彼女の方へ向け、小さく囁いた。
「…明日…ここで待ってるわ。…だから…
ディアーブルをこの場所へ連れてきて。」
「…分かったよ。でも私、あんたのナイフにビビったわけじゃ
ないから」
彼女はそう言って素早く動き
私の手元にあるナイフを足で蹴り上げ落とした。
「っ!」
少し遅れてきた手の痛み。
振りあがったナイフは私の手へ刃先を向けて落ちてきた。
手の甲から流れる血を見て私は一瞬
あの時の光景を思い出しかける。
けれどそれは
突然の身体への温もりで遮られた。
「!!?」
私は目の前の彼女に
ぎゅっと抱き締められていた。
「ちょっと何して…っ」
「ねぇ、話してよ。…美紗の過去」
「…どうして私が今日初めて会ったあなたに、
過去のことを話さないといけないの?」
抱き締められたまま
私は彼女に問う。
「話したら、美紗の気持ちも少しは軽くなるかと思って…ね?
あなたの事は、誰にも話したりしない。…大丈夫!私は美紗の味方だからね…?」
…優しい声で話す彼女。
こんなに暖かい声なんて
何年ぶりに聞いたかな…
気づくと私は泣いていた。
彼女の胸の中で、夜中だというのに
大声で涙をボロボロ流して、泣いていた…
「っ…によ…なによぉお…!味方味方っていっつもみんな言ってるじゃない!!!…うぅっ…ひっくっ…それなのに…全然上辺だけ…
中身分かろうとしてくれる奴なんか…っ一人もいなかったじゃないかぁぁ!!!!!!」
もうダメだ。
もう、止まらない。
何年も優しさを感じていなかった私に
彼女の『大丈夫』という言葉は
あまりにも辛すぎた……—————
今までの数年分の感情が
言葉となり、涙となり
溢れ出してくる。
「ッ!ほんとはぁッ私だって…っみんなに話聞いて欲しかった!
…一人が辛かった…っ!でも…みんな助けてくれなかっ…!
く…ひっ!…パパとっ…ママをっ…目の前で殺されて…っぅう!そっから…男っ…怖くて!憎くてたまらなかったよぉぉぉ!!!!!!!!!
わぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」
もう…限界だ。
「大丈夫…大丈夫だよ?私が美紗の味方に…友達になる。…ね?っ!」
「っ!!春、ちゃん…!!!」
「あ…初めて名前…呼んでくれた」
ぐしゃぐしゃの顔を春へ向けると
にっこりと微笑んでくれた。
その顔へは
一筋の涙が 頬を伝っていた…
その涙を見たときに
一瞬あの男の顔が過ぎった。
清らかで美しい涙……
「春ちゃん」
「何?」
「ありがとう…」
「…ううん。私の方こそありがとう」
「?」
「話してくれて、ね?」
「うん…あの…」
「どうした?」
「ディアーブルのことなんだけど、もう…いいよ」
「…明日連れてくるって事?」
「うん。もういいの…復讐は必ずしてやるけどね」
「…そっか…ははっ!手強いな〜美紗は!」
落ち着いた私は
少し春と話した後
夜が明ける前に帰ることにした。
また会うという
約束をして……
春ちゃん。
ディアーブルの娘にして
私の 友達…———————