ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 僕たちの求めた絶望色〜赤・白・黒〜コメください>< ( No.67 )
日時: 2011/03/02 21:55
名前: 色茱萸 (ID: wJNgr93.)

第十二話


「美紗ちゃーん!お友達が来てるわよーっ!」

「!!はい。今行きます」

最近、一週間に二回というペースで

春が施設にやってきてくれる。

前までは夜中にこっそりと会っていたのだが、

どうせなら隠さない方がいいと春が提案してくれたので

前よりも友達が少し増えた。

前までの私には、有り得なかったことを

春は簡単に実現してくれた。

「春ちゃん!待たせてごめんね?」

「いいよいいよ!あんまり待ってないからさ」

「そう、良かったわ」

玄関に出ると、にっこりと微笑んだ春が待っていた。

「今日はなにする?ゲーセンにでも行く?」

「ううん。今日は春ちゃんと話がしたいの。聞きたいことがあって…」

「…親父のこと?」

「半分合ってるわ。でももう半分は違うの」

「うん。じゃあとりあえず座って話そうよ。…あそこのベンチでいい?」

私の我侭を聞いてくれた春は、近くにあったベンチを指差す。

ベンチへ腰を下ろすと、まだ冷たい風が頬を撫でた。

「寒いね…で?何がどうしたって?」

「うん、春ちゃん。ディアーブルのこと、何か隠してない?」

「…どうして?隠すことなんて今更ないでしょ?」

「私ね、人間観察みたいなのが得意なの。初めて会った人でも、その人が何か隠してるなってこと、すぐわかるわ…だから、春ちゃんも…」

「…ハハ!すっごい特技持ってんだね、美紗は。…本当はもっと親しくなってから話す予定だったんだけど…この際だから全部話すよ。ただし!このことは美紗にとってすごくショックなことになるかもしれないんだよね。それでも聞く?」

ショックなことと聞いて、私は一瞬戸惑ってしまう。

けれど意を決して春へ答えた。

「…聞くわ。どんなことでも構わないもの。秘密は、嫌いなの」

「そう、じゃあ…美紗のお母さんの名前、なに?」

「?…江美、だけど…?」

いきなり不思議なことを問う春に、

私は舌を噛みながら答えた。

「…私の親父、ディアーブルはね?私の本当の父親じゃないんだよ…」

「!!」

少しそれを聞いて驚く。

だが別に私にとってショックなことではない。

春は、何を言いたい…?

「私は幼い頃にね、ディアーブルに拾われたの。…聞いた話だけどね。それで、私はある子の代わりとして、ディアーブルに育てられたんだ」

「ある、子?誰なの?それは…」



「美紗のことだよ」



「…え?」

春は、何を言っているのだろうか。

私の代わりとして?どうしてアイツが…————

「…美紗のお父さんは、本当のお父さんじゃないってことよ。本当の父親は…」

待って…その先を、お願いだから…言わないで!!!!




「ディアーブルなんだ…」




やめて…違うわ!私のお父さんは死んだのよ…?

殺されたのよ!アイツに!!

その仇が…私の父親…?

うそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだうそだぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!!!!!

「う…そよ…ッ!うそ…」

「ごめんね、美紗…やっぱり言わない方が良かったよね…泣かないで?美紗…」

壊れた蛇口のように溢れ出る涙を

私は止めることができなかった。

否。

止めなかったのだ…

こうでもしないと、自分を保てなくて…


春が言うには、

私の母とディアーブルは恋仲にあったらしい。

そして誤ってできてしまったのが私、『相川美紗』なのだ。

既に父と結婚していた母は、ディアーブルとの間にできた私を

父の子として産み、育てた…

それがたまらなく憎かったらしい。

ディアーブルは父をあんなにめちゃくちゃにして殺してしまった。

そして、愛していた母までも…————

幼かった私を施設において行ったのもアイツ。

この名前をくれたのもアイツ。

事件がバレなかったのも、アイツが片してくれていたから…

でも…アイツは…私の両親の仇なのにッ!



結局この日は


春ちゃんが帰るまで


ずーっとベンチで


目が腫れるまで


泣き続けていた……————————


心が


いたくて、


何より


アイツを殺すということを
























迷っているんだ……————————