ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 僕たちの求めた絶望色〜赤・白・黒〜参照300突破!? ( No.69 )
- 日時: 2011/03/12 14:10
- 名前: 色茱萸 (ID: wJNgr93.)
第十四話
「ぅ…んっ…」
「…紗!美紗!!」
目を開けると真っ白な天井。
そして、心配そうに覗き込む春の姿が映った。
意識が完全に定まっていない中、
周りの様子を把握してみる。
時計を見ると日付が変わっていた。
確か昨日は三月の十一日だったと、回転の利かない脳みそで
記憶を懸命にたどってみる。
「…春、ちゃん?私…ここはどこなの?」
「病院だよ!よかった、意識が戻って」
「病院?どうしてまた…」
そう発した瞬間、私は一気に意識がはっきりし、
昨日の記憶が鮮明に甦ってきた。
春と話をしていたら、突然後ろから誰かに殴られて…———
「ねぇ春ちゃん!私誰に殴られたの!?」
「…それは…心当たりがあるんじゃない?美紗にはすぐわかる」
「!!ディアー、ブル…?そうなのね!?アイツが…!」
「美紗ぁ…私、アイツとさ、美紗が倒れた後色々話し合ったんだ…私ね、ホントは美紗が私に何を話そうとしてたのか…分かってたんだよ…
きっと…全部、ね?そして、アイツも知ってたんだと、思う…」
苦々しい顔つきでそう語る春を見て、私は目を見開いてしかめっ面をした。
「知ってて…そうなの。でも何で私を気絶させるような真似を?」
「堂々と美紗の前に顔出すの、躊躇したんだろうね。アイツにそんな繊細な心があるなんて思わなかったけど」
「でも…私がいないところで二人で話すんなら、家でもどこでもいいじゃない!どうして…」
「美紗が話そうとしたことの続きをあいつは聞きたくなかったんだろうね。…昔から、勢い任せに事を進めてきた人だから…後先考えずにね。美紗の両親のことだってそうでしょ?」
「…うん。確かにそうかもしれないわ…これで打ち所悪かったりなんてしたら私死んでたもの」
「そうだね。ごめんね、美紗…じゃあ私は用事が、っていうか塾があるから帰るよ?それじゃあね、お大事に」
「うん。また、暇ができたら…来てくれる…?」
ドアに手を掛けようとしていた春は、
こちらを振り向きながら笑顔で答えてくれた。
「馬鹿だね!毎日来るに決まってるでしょ?」
「!!…ありがとう」
「うん、それじゃあまた明日ね!」
「気をつけて帰ってね。塾頑張って…」
病室の廊下から手を振る春に、
微笑みながら私も手を振る。
視界から完全に春の姿が消えると
私は安静にすべく、布団の中へ潜り込んだ。
「まだ夕方かぁ…ふぁぁ!…おやすみなさい全国の皆様…」
大きな欠伸を一つして、
自分でも不思議に思うような言葉を口走りながら
私は再び 意識を手放した……—————