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Re: 僕たちの求めた絶望色〜赤・白・黒〜参照400突破!か、感謝! ( No.88 )
日時: 2011/03/25 22:19
名前: 色茱萸 (ID: wJNgr93.)

第十八話


ゆっくりと、ゆっくりと

ディアーブルは春に近づいていく。

その間も私は、先程のディアーブルの言葉が

頭の中に過ぎり、動くことが出来ないでいた。

「春…今までの十五年間、僕にとってはお前が全てだった。美紗の代わりとして、最後まで僕の娘でいてくれた。…ありがとう、春」

そう小さく息をしている春にディアーブルは告げた。

そして春に向かって、確実に春の心臓へ当たるように

ディアーブルはスッと ナイフを上げた。



どうかしてる…


狂っている、この人は。


私がこの人を 


こんな風にしてしまった…


だから今


春までが 被害を受けている。


受けるべきなのは、


この子じゃない…


この子じゃ…



「春じゃない!!私がッ!!!」



そう、悪いのは私。


罰を受けるべきは



……私なんだ。



気づくとあんなにも動かないでいた身体が

思いっきり動いていた。

春とディアーブルを目指して、

勝手に動いたんだ。

「…ッ美紗!!!」

遠くで春が私の名を呼んだのが聞こえた。

それでも身体は止まらない。

私の身体は、二人の間に割り込み

春とディアーブルの間に壁を作る。


その瞬間、私の目に写ったのは

目を見開いて驚いているディアーブルと

私を目指して落ちてくる 血の色のナイフ…———



「美紗ぁぁぁあああッ!!!!!!!」



意識が遠くなっていく。

何が起こったのかも分からないでいる私の目には

ぼんやりと見える春の泣き顔と、

愕然としたまま立ち尽くす

ディアーブルの姿が映っていた…


    *    〜春視点〜


美紗には言わなかったけれど

本当は私の傷はそんなに深くなかった。

あれはディアーブルを油断させるための演技。

そう、全ては美紗のための、そして

私自身のため…


ディアーブルにとどめを刺されそうになったとき

私は自分で逃げようと思っていた。

血は思ったより出ちゃったけど、

それくらいの体力は残っていたから。

そして、ディアーブルが 私に思いっきりナイフを振り下ろそうとした瞬間に、目の前になにかが飛び込んできた。


美紗だった。


美紗は私とディアーブルとの間に壁を作った。

きっと可能性を賭けたのだろう。

ディアーブルがナイフを振り下ろす手を止める。

また一緒に、私と遊べる。

そんなことを思いながら、奇跡を願っていたに違いない。

私は美紗のその行動の意味が、一瞬理解できなかった。

すぐに私のためなのだと気付いたけれど。

でも、気づいたときには終わっていた。

…なにもかも…

叫んだけれど美紗は止まってくれなかった。

ディアーブルの勢いのついたナイフを

避けずに美紗は受け止めてしまったのだ。



目の前が、血に染まった瞬間に

もう何も考えられなかった。

美紗の傷口が浅いことを、ひたすらに祈った。

生きていて、と…


けれど、ダメだった…

勢いのついたナイフは、運の悪いことに

美紗の心臓部を深く貫いていた。

「あ…ッみ、さ…!!!!いやだ…やだよ美紗ぁ!!う゛ぁああぁぁぁあぁぁあああぁあッッ!!!!!!!!!!!」

初めて、声を上げて泣いた。



もう遊べない


もう話さえもできない


もう…



美   紗   に   会   エ   な   イ   ・ ・ ・ ・