ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ─ESP remake version─ ( No.6 )
- 日時: 2011/02/03 21:10
- 名前: 遊太 (ID: BZFXj35Y)
03【罪を犯す能力者】
東京 某所
とある町のとある路地裏で、一人の青年が不良5人に囲まれていた。
「てめぇ、俺にぶつかって謝りもなしか?」
リーダー格と思われる男は、角刈りに腰パンと不恰好である。青年の方は髪を紫に染め、左目は髪に隠れている。
簡単に言えば青年は雰囲気から暗く、完全に不良とは正反対の性格と容姿だ。
「言葉なしかよ。やっちゃおうぜ!!」
丸刈りの男が青年に殴りかかったその時だった。
パン!!
青年は両手を合わせ、周りに大きな音が響いた。
その瞬間、囲んでいた5人は見えない何かに押されその場から吹き飛ばされる。
「ぎゃ!!」
「うぉ!!」
「ひゃぁ!!」
3人は地面や壁に頭をぶつけて気絶。立ち上がった2人はポカンとした表情で青年を見つめていた。
「お前ら…贖罪しな………」
青年は残っている不良のリーダーの方を向くと、再び両手を合わして音を鳴らす。
その瞬間、再び不良のリーダーは何かに押されて壁に頭を叩きつけられた。
「うっ………くそっ…………」
青年がもう一方の不良の方を向くと、その不良は悲鳴をあげて路地から走って逃げて行った。
「一人じゃ何もできないのか……所詮は陳腐な動物だ。」
青年は倒れている不良のポケットから財布を取ると、その場から立ち去った。
**********
翌日 百宮高等学校
いつもの様に天馬は登校し、朝のホームルームが始まった。
「まずは報告したいことがある。昨日、一之瀬高校の生徒が何者かに襲われ、全治1カ月の怪我を負いました。」
担任の言葉に、生徒全員がざわつき始めた。一之瀬高校は、東京都内で不良高校と呼ばれて有名である。
「最悪じゃん………百宮高校、絶対目つけられるよ………」
「面倒くさいなぁ〜馬鹿じゃないの。」
生徒はグダグダと文句を言っているが、天馬は一人窓から外を眺めていた。
“自分には関係ない”と天馬は頭の中でそう言い聞かせた。
それより、問題は超能力のことだ。今日は‘アビリティ’という会社にまた行かなければならない。
まあ、自分から言ったので後悔はしてないが・・。
天馬が外を眺めていると、前に座る関西出身の日下部勇人が話しかけてきた。
「なぁなぁ!!天馬は興味ないんか?なんかおもろくなりそうやで!!」
「そうでっか。」
天馬は適当に勇人の言葉に応答する。日下部勇人はクラスのムードメーカーでクラスの人気者だ。
「なんやその返事。元気ないの〜。」
「勇人、俺には関係ないんだ。前を見ろ。」
「天馬!!言葉遣い!!」
隣に座る七海が天馬の椅子を蹴りながら怒鳴った。天馬はバランスを崩し、前と同じように頭を窓にぶつけた。
「痛った!!」
「はは!!女子やられてん!!」
勇人は天馬と七海を見て笑う。天馬は頭を押さえながら七海を見た。
「天馬。そういや、昨日学校帰りどこ行ってたの?」
「……え?」
天馬は思わず言葉を失くした。勇人は天馬の表情が怪訝になったことに気がつく。
「どうしたんや?」
「い、いや…ちょっと用事があって……。てか何で?」
「だって昨日、学校の帰り天馬の家寄ったら、まだ帰ってきてないって聞いたからさ。」
天馬は頭をフル回転させ、嘘を言おうとする。何があっても超能力関係のことは言ってはならない。
「別に…寄り道だよ……」
「別に寄る場所なんてないでしょ?」
天馬は段々と七海に追い詰められる。その時だった。
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り、ホームルームが終わった。
「お、つ、次の授業の準備しないと!!」
天馬はわざとらしく大きな声で言うと、とりあえず授業の準備を始める。
「……ま、いっか。」
七海は諦めたらしく、次の授業の準備を始めた。天馬は安堵の息をもらし、放課後まで学校生活を過ごした。