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Re: ─ESP─10話UP ( No.21 )
日時: 2011/02/03 15:00
名前: 遊太 (ID: BZFXj35Y)

10【貫く刃】



燃え上がる展望台  東京タワー 



「え…………どうして………………」



天馬、亜樹、算介は自身の目を疑った。そして、幻か夢か、ただの目の錯覚なのだと信じた。
だが、願いはスチュアートの一言で一瞬で散った。


「これもまた運命でござる。」


煙が晴れて3人の目に飛び込んだ光景は、吐血して倒れている三郎の背中に刃を向けたスチュアート。
スチュアートの隣には、不気味な笑みを浮かべてマルキエビッチが3人を見ていた。
「俺らの邪魔をすれば、また死人が出ることになるぞ。」
「その通り。汝ら、二度とワシたちの邪魔をするでない。見せしめとして、この男は殺しておく。」
スチュアートはそう言うと、刀を三郎の心臓の位置で止めた。
「ぐ…………みん……な……すまなかっ……………」







グシュッ







スチュアートは、無表情で三郎の心臓に刀を刺した。その瞬間、三郎の目は段々と閉じていく。
刃が心臓に突き刺さった直後、亜樹が発狂しながら2人に突っ込む。


「あぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」


亜樹は両手を2人に向けて電気の球を2発撃った。しかし、2発ともスチュアートが刀で防ぎ、亜樹へと向かう。
「女子も、あの男の後を追うがいい…………」
亜樹はバランスを崩して、三郎の遺体の前に派手に倒れ込んだ。顔をあげると、顔が白くなった三郎が目の前にいた。
「三郎さん…………やだよぉ……………」
亜樹は三郎の顔を見ながら、涙を零して言う。すると、スチュアートが刀を手にして亜樹の後ろに立つ。




「さらばじゃ。」




スチュアートは無表情で刀を振り上げ、亜樹の首元めがけて躊躇なく振り下ろした。






「させるかぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」





しかし、後ろから天馬と算介がスチュアートの体にタックルを繰り出し、スチュアートは拍子に刀を手から落とした。

「ぬぐっ………餓鬼ども……」

スチュアートは体勢を戻して一旦離れると、天馬と算介を睨みつけた。その間に2人は亜樹を助ける。
「亜樹さん、早く立って!!!」
「三郎さんは俺が連れていく!!天馬は亜樹さんを頼む!!!」
算介はそう言うと、三郎の遺体を担いでエレベーターへと向かおうとした。
しかし、最悪にもエレベーターの前にはマルキエビッチが不敵な笑みを浮かべて算介たちに近づいていた。
「逃がさないぞぉぉ。全員、殺してやるぅぅぅ。」



「よせ。そいつらは逃がすのじゃ。」



スチュアートの言葉に、算介、天馬、マルキエビッチまでもが驚いた表情を見せた。スチュアートは天馬と算介の方を向く。
「死んだ男は、汝らの先輩じゃろう?生きて苦しむがいい。その男は死んで、汝らは生きている苦しみをな。」
スチュアートがそう言うと、マルキエビッチは何度か頷いてエレベーターから遠ざかった。
「感謝するんだなぁぁぁ。クズ能力者めぇぇ。」
マルキエビッチの暴言に耐えながら、算介は三郎を担いでエレベーターの中に入る。
天馬も精神が壊れた亜樹を担いで、エレベーターに向かうとした。だが、一旦足を止めてスチュアートの方を振り向く。



「お前は、俺の手で絶対に殺してやるよ。」



「…………無理じゃよ。どう頑張ってもな。」



スチュアートの言葉を聞くと、天馬はエレベーターに乗り込む。
そして、悔しい思いを胸に、エレベーターのドアが閉まり始めた。





「後悔しろ!!仲間を殺した敵に助けられたことをな!!!ひゃっはっはっはっは!!!!!!!」





エレベーターが閉まる間際に、マルキエビッチは高笑いをしながら叫んだ。
天馬と算介は唇を噛み締めながら、エレベーターが閉まるまで2人を睨み続けた。
やがてドアは閉まり、三郎の遺体と精神が崩壊した亜樹を連れて、天馬と算介は下へと向かったのだった。