ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ─ESP─11話UP ( No.31 )
- 日時: 2011/02/04 18:47
- 名前: 遊太 (ID: BZFXj35Y)
12【計画】
「それじゃあ、会議を始めようか。」
どこか分からぬ暗い場所に、7人の人影がひっそりと佇んでいた。その中の1人は、クライムである。
ジャッジⅦのメンバーは全員集まっているが、辺りが暗くて素顔や状況が分からない。
「拙者は一先ず休暇をもらいたいでござる。」
「俺も同感だ。タワー襲撃で顔がバレてるしな。」
スチュアートとマルキエビッチはそう言うと、暗闇の中へと完全に消えた。残ったのは5人だけである。
「それじゃあ、僕、ケッチャム、太陽、アギト、烈香の5人で襲撃する。かなり綿密に計画しておきたい。」
クライムの説明で、辺りがボウッと明るくなった。どうやら、渋谷区にある廃ビルの内部らしい。
「俺は異論はないが、どこに襲撃する気だ?」
「タワーの次は、議事堂か?それとも、スカイツリーか?」
ケッチャムとジャージ姿に刀を持った志村太陽の言葉に、クライムは首を横に振った。
5人は立ったまま話しており、その内若い丸刈りの霧鷲アギトが壁にもたれかかってクライムに言う。
「兄貴、あまり派手にやり過ぎると、マジで奴らもやってきまっせ。」
「いいよ。僕らのやり方で、悪人を断罪する。彼ら‘アビリティ’は僕らの邪魔をする、イコール悪人と見なす。」
クライムは紫色の髪を靡かせ、崩れた壁に開いた穴から、ネオンで染まった東京の街を見据える。
「…………襲撃するのは場所ではない。ある人物だ。」
クライムは振り向き、4人の顔を見つめる。そして、ゆっくりと口を開いた。
「その人物は、僕ら超能力者を侮辱して違法な“裏法律”を創った。」
クライムは拳を握りしめて怒りを堪える。4人はクライムの言葉を聞いて顔を合わせた。
「現日本総理大臣、神龍璽光世を殺害するのだ。」
クライムの言葉に4人は驚きの表情を見せなかった。それどころか、不気味な笑みを浮かべるアギトの姿がいた。
ケッチャムは背中に背負っていた背丈ほどの斧を軽々と持つと、クライムを見て頷く。
「俺は賛成だ。あいつは、平然とした顔でこの日本を動かしている。それが気に食わない。」
ケッチャムに続いて、太陽が刀を抜いてクライムを見ながら頷いた。
「あいつは超能力者の存在を知っておきながら、世間に隠し続けている。意味の分からん機関で見張らせてな。」
「それじゃあ、みんな同じ意見ということだね。」
クライムは笑顔で隅の方に立っていた赤い髪が特徴的でモデルの様なスタイルの篠宮烈香を見る。
烈香は見た目は気が強そうだが、ずっと下を向いたまま喋らず、チラリとクライムを見る。
「烈香、君の恨みも晴らすよ。計画の実行は今週の水曜日だ。」
クライムは4人に近づき、一枚の紙切れを見せた。紙切れにはビッシリと文字が書かれている。
「奴は、水曜日にプライベートでハワイに行くらしい。勿論、飛行機でね。そこで、計画を考えた。」
クライムはそう言うと、4人に計画の話を始めた。
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総理は水曜日の午前中、成田空港で政府専用の飛行機でハワイに発つ。
飛行機に乗れるのは総理、総理のSP6名。後は機長と副機長に、選抜された乗務員3名。計12人。
スチュアートの超能力「変化」で僕ら7人はSPや乗務員に化ける。そして、飛行機が離陸してから実行開始だ。
機長と副機長以外は殺してもいい。後は、7人でじっくり総理を痛めつけよう。総理が嫌っている超能力でね。
────────
クライムが計画を話すと、アギトが首を傾げた。
「スチュアートとマルキエビッチは休暇を取るって言ってましたやん。」
「問題ない。彼らは総理を殺すと聞けば、飛んでくる筈だ。」
クライムは星で輝く夜空を見上げ、大きく深呼吸をした。
「今こそ、超能力者が上を行く時代だ。総理を殺し、真実を世界に広めてやる。」
計画実行まで残り3日─────