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Re: ─ESP─12話UP ( No.34 )
日時: 2011/02/05 16:41
名前: 遊太 (ID: BZFXj35Y)

13【自身の弱さ】


「ここが俺の家だ。」


算介に連れられ、天馬は豪華なお屋敷の前にいた。屋敷の表札には、趣のある字で「水茂」と書かれてある。
「おーい!!倉田!!」
算介が玄関から叫ぶと、木の門は横に開いて行く。そして、天馬の目の前に、石造りの長い道が現れた。
屋敷は高い石の壁に囲まれ、更に屋敷の庭には小さな池が2つある。まるで、芸能人が住みそうな家だ。
2人が敷地に入ると、サングラスにスーツを着たオールバックの男性が立っていた。

「爺ちゃんの使いで、俺が生まれた頃からお世話になってる倉田さん。」

倉田は算介と天馬の方を向いて一礼をする。天馬も軽くお辞儀をすると、算介の後をついて行く。
しかし、算介は屋敷に行かず、途中で曲がって屋敷の横にある道場の様な建物に向かっていた。




「爺ちゃんは超能力者だから。」




「へぇ〜…………は!?」




天馬は算介の突然のカミングアウトに驚き足を止めた。算介は天馬が止まったことに気付いて振り向く。
「詳しい理由は道場にいる爺ちゃんが話すよ。」
算介の言葉に、天馬は一応頷くとそのまま道場の前まで来た。そして、石の階段を上って、ゆっくりとドアを開けた。

「………ようこそ。水茂道場へ。」

道場の中に入ると、ひんやりとした空気が天馬の頬に当たった。道場の真ん中に、座禅を組んだ老人がいた。
老人は道着を着ており、白い髭が胸まで伸びている。一見怖そうに見えるが、丸い眼鏡が全てをぶち壊した。
「算介、この子が話していた炎を使える能力者の小僧か?」
「そうだよ。天馬、俺の爺ちゃんで戦い方を教えた師匠でもある算重郎爺ちゃんだ。」
算介が天馬に説明すると、算重郎から天馬に近づいてきた。算重郎は天馬を見ながら頷いてため息をついた。



「お主、戦い方も技もなかろう?」



「え?」



算重郎の指摘に、天馬は何も言えなかった。図星だ。
算重郎は鼻で笑うと、右手をあげた。
「わしの超能力は水秤。水をありとあらゆる物に変え、固体にも気体にも変化させれる。」
算重郎の右手は段々水に変わり、一瞬で固まった。つまり、氷となった。
「なるほど……どうりで道場の中がヒンヤリするわけだ………」
「爺ちゃんは最強クラスの超能力者だ。だけど、もう歳だからね。」



「まだまだ現役じゃ!!!」


算介の言葉に、算重郎は大声で怒鳴った。
算介は「やばいっ」という表情になり、思わず後ろに下がる。天馬も体で算重郎の殺気を感じていた。

「貴様ら小僧に試練を与えよう。わしに触れることができたらお前たちの勝ち。お前らのどちらかが気絶したら負け。」

天馬は算介と顔を見合わせる。2人は頷き、算重郎の方を向いた。天馬は両手から赤い炎を出し、算介は水で手を包んだ。



         ────────




     「戦闘の心得その壱、相手の足でなく全てを見ろ。」



天馬と算介は算重郎に向かって走り始める。天馬は飛び上がり、両手の炎を算重郎に近付けた。
算介は一旦しゃがみ、人差し指に水の球が出来上がる。そして、その人差し指を算重郎の顔に向けた。


「そうやって上と下から攻撃すれば喰らうと思ったか?まだまだじゃな。」



「長流水空断破。」



算重郎は拳を握りしめて一瞬だけ力む。その瞬間、天馬と算介は、ものすごい勢いで吹き飛ばされた。
算介は体勢を戻しながら着地したが、天馬は床に叩きつけられて急いで立ち上がった。算重郎は天馬の姿を見て笑う。
「着地の仕方も分からん小僧が、よく‘アビリティ’で働いておるのぉ。」
算重郎はニヤリと笑い、両手を水で包み氷に変えた。


     「戦闘の心その弐、速さは最大の攻撃。」  


算重郎が呟いた瞬間、天馬と算介の目の前から一瞬で姿を消した。
「な!?」
「爺ちゃん………現役バリバリだな………」




「当たり前じゃ。」




算重郎は天馬と算介の後ろに突如現れた。天馬と算介は急いで後ろに下がる。
天馬は唇を噛み締めて自分の弱さを痛感した。それは、隣にいる算介も同じであった。

「悔しいなら教えてやろう。小僧、算介、お前らに超能力者に欠かせない技を教えてやる。」