ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: ─ESP─用語集UP ( No.40 )
- 日時: 2011/02/06 16:23
- 名前: 遊太 (ID: BZFXj35Y)
15【白銅 葵】
翌日
学校を終えた天馬は、家に帰らず‘アビリティ’へと向かっていた。理由は、亜樹のお見舞いだ。
三郎が死んだ日に精神が壊れた亜樹は、あれから‘アビリティ’で治療を受けていた。大体は回復している。
‘アビリティ’の前に着くと、そこには見たことのない腰まである髪の女性が立っていた。
「おっ!海藤天馬君?」
女性は天馬の気配に気がついて振り向き、天馬に向かって手を振った。天馬はどうしていいか分からず、とりあえず会釈する。
「初めまして、私は白銅葵。……本井さんのことは………残念だったわ。」
「………会社の人?」
天馬は三郎の死を知っている白銅に首を傾げながら聞いた。すると、白銅は笑顔で頷く。
「そうだよ。普段は諜報係で働いているから、あまりあなた達とは合わないからね。」
白銅はそう言うと、天馬を連れて社内に入った。天馬はついつい、白銅に見とれる。
スタイルはモデル並みに良く、顔立ちも凛として美しい。着ている黒いジャケットとスカートが似合っている。
「5階に亜樹ちゃんはいるわ。私は用があるからこれで。」
白銅は天馬に手を振ると、そのままエントランスにある受付の方へ行ってしまった。
天馬はエレベーターに乗り、5階のボタンを押す。そして、亜樹のいる5階へと向かった
───────
エレベーターを降り、紺色の絨毯が敷かれた廊下を歩いていると、‘治療室’という札がある部屋に着いた。
ノックをして入ると、中に設置されたベットに座っている亜樹の姿が見えた。
「亜樹さん、大丈夫ですか。」
「やぁ天馬君。お見舞いありがとう。」
亜樹は天馬に気付くと、笑顔で天馬の顔を見た。天馬はベットの横に会ったパイプ椅子に座る。
「すみません。学校の帰りで何も持ってこれなくて………」
「いいよ。それより、あれから彼らに動きはあった?」
亜樹は天馬の質問に首を横に振る。すると、亜樹は寂しげな表情になって俯いた。
「タワーを襲撃してから、パッタリと彼らの目撃情報さえなくなりました。情報が入ったら、知らせますよ。」
「ありがとう。」
亜樹は再び笑顔になり、立ち上がって窓を開けた。窓から心地の良い風が入ってくる。亜樹は背伸びをしながら、天馬を見た。
「タワーで三郎さんの遺体と私を助けてくれてありがとう。まだ、お礼言ってなかったよね。」
「いえ………あの時、僕と算介は何もできなかったから………」
天馬が暗い声で言うと、亜樹が天馬の頭を撫でながら言った。
「弱いのは恥ずかしいことじゃない。誰だって、弱い時はあるんだよ。」
亜樹の言葉に、天馬は何度か頷いて立ち上がった。
「亜樹さん、早く元気になって下さい。また来ます。」
「うん。ありがとう。」
天馬は亜樹に礼をすると、治療室から出ていった。
**********
会社から出て家に帰ろうとした天馬に、聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。振り向くと、白銅であった。
「やっほー!!亜樹ちゃんとは会った?」
「はい。………何か?」
天馬は駆け寄ってきた白銅を見ながら言う。白銅は頷き、会社の前に泊まってあるバンに指を指した。
「実は、さっき例の‘ジャッジⅦ’についての情報が入ったの。」
「え!?」
天馬はその言葉を聞いて表情を変えた。白銅は振り向き、黒いバンへと向かう。
「まずは乗って!!現場に急行するわ!!」
「は、はい!!」
天馬は白銅を追い、黒いバンの後部座席に乗り込んだ。運転席には、すでに男の人が乗っていた。
「よお。俺は竜崎親也、白銅と同じ諜報係の者だ。君のことは聞いてるよ。」
「は、はぁ………」
角刈りにサングラスをかけたヤクザの様な竜崎は、低い声で天馬に言う。しかも、花柄のシャツだ。
助手席に白銅が乗り込むと、白銅は竜崎の方を見る。
「さっさと車出して!!」
「はいよ。」
「………なんか、異色だな。」
天馬は苦笑いを浮かべながら、とりあえず現場へと向かったのだった。