ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: ─ESP─15話UP ( No.41 )
日時: 2011/02/06 18:34
名前: 遊太 (ID: BZFXj35Y)

16【vs久遠 岩夫】


約10分経ち、天馬、白銅、竜崎を乗せたバンは止まった。止まった場所は、トタンで仕切られた工事現場の前である。
無論、トタンの壁には‘工事中’と書かれている。入口は閉まっているが、どうやら今は工事をしていない。

「ここだ。情報によると、この中に工事関係者でない人間が入ったと聞いた。」

竜崎と白銅は車から降りると、腰からスタンガンを取りだした。そして、恐る恐る工事現場の出入り口に近づく。
天馬は丸腰だが、とりあえず2人について行く。中に入ると、ドリルやダンプカー、スコップや鉄骨が積まれている。
更には、マンション4階分まで鉄骨で骨組みが作られている。天馬は辺りを見渡していると、ある物を見つけた。
「なんだこれ………黒い砂?」
天馬の足元だけ、黒い砂が広がっている。その瞬間だった。



「お、おわぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」



黒い砂が、人間の手に変わり天馬を止めてあるダンプカーまで引きずる。黒い砂はダンプカーの下に消えていった。
「痛って〜ぇ………なんだよ………」
「天馬君、大丈夫!?」
白銅と竜崎は急いで駆け寄り、辺りを見渡す。しかし、周辺には誰もいない。それはおろか、人の気配さえ感じない。
「気をつけろ…………誰かいる。」
竜崎はスタンガンの電源を入れ、辺りを警戒する。すると、3人の目の前に先ほどの黒い砂が、地面に浮き出てくる様に現れた。



「め、命令だから、き、君たちを殺す!!」


黒い砂は人の形になり、冴えないサラリーマン姿の男性になった。眼鏡をかけた男性は両手を3人に向ける。
白銅、天馬も竜崎に並ぶようにして戦闘態勢に入る。
「ぼ、僕は久遠岩夫……ケッチャムの部下だ。……よろしく。」
久遠は体を砂に変え、3人に襲いかかってきた。

「ぐっ!!こいつはスタンガンが効かん!!気をつけろ!!!」



「俺がやります!!!」



天馬は白銅と竜崎の前に出て、両手を炎で包み込む。後ろの2人は呆然とした表情で天馬を見つめる。
久遠は一旦元の姿に戻ると、天馬を見て鼻で笑う。
「僕をなめてるの?子供だからって、容赦はしないよ!!!」
久遠は砂に変わって天馬に向かってくる。しかし、天馬は冷静に戦闘態勢に入ると、拳を握りしめて力んだ。





「炎破!!!」




天馬が叫んだ瞬間、天馬を中心に辺り一面が熱風に襲われた。
「熱っ!!」
久遠は思わず元の姿に戻り、天馬を睨みつけた。天馬は両手を炎に変えて、休む間も与えず久遠に向かった。
「炎拳!!!」
天馬は右手の拳で久遠の腹部を殴る。久遠のシャツに火が飛び移り、久遠は慌てて天馬から離れ、火を消した。


「ちくしょ………餓鬼が大人をなめるなぁぁぁぁぁ!!!!!!」


久遠は近くに落ちていた鉄棒を振り回しながら天馬に向かってくる。
「………俺の編み出したオリジナル技、披露してやるよ。」
天馬が両足に集中すると、両足から炎が上がった。そして、右手に炎の手の平サイズの球を創りだす。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
久遠が奇声を発しながら、鉄の棒を振りまして目前までやってきた。その瞬間、天馬は両足に力を込めた。



「必殺超剛炎球!!!!!」



天馬が叫んだ瞬間、足の炎がジェット噴射の様になり、天馬は右手の平の炎の球を久遠の顔面に押し当てた。
それも


   ──ジェットコースター並みの速さ──



「うっ、ぎゃぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」



久遠は悲鳴を上げながら炎に包まれ、後ろに吹き飛ぶ。後ろには、マンション4階分の鉄骨の骨組みがある。
後ろで見ていた白銅と竜崎は声を合わせて驚いた。
「おい!!!そいつを殺すな!!!」
「え?」
天馬は着地して2人の方を振り向く。その直後だった。




ガシャァァァァァァ




      ズウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン





工事現場に響き渡る轟音。鉄骨の骨組みは崩れ、辺りを砂煙が包んだ。しかし、天馬が熱風で砂煙を晴らす。
白銅と竜崎は崩れて山積みとなった鉄骨に近づいてため息をついた。

「馬鹿………危ない所じゃない………」

白銅は大きくため息をつきながら、地面にしゃがみ込んだ。竜崎も安堵の息を漏らしている。
天馬が山積みとなった鉄骨を見ると、鉄骨の下敷きになって目をグルグルと回して気絶している久遠がいた。
「あんた、こいつが死んだら‘ジャッジ’の手掛かり無くなる所よ。」
白銅は立ち上がり、竜崎を見た。竜崎は頷き、鉄骨を退かして気絶している久遠を抱えた。

「天馬君。戦うのはいいけど、考えて戦って。もし死んでたら、‘ジャッジ’の手掛かりを失う所だったんだから。」

白銅はそう言うと、竜崎と共にバンへと向かって行った。
天馬はため息をついて反省したが、すぐに表情が笑顔となった。



     「超能力者………最高………じゃん。」



天馬は自分の手から炎を出すと、スキップで2人の後を追った。