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Re: お嬢様と執事。 ( No.29 )
日時: 2011/02/06 11:38
名前: 陰魔羅鬼 ◆ohBawF8LBM (ID: gwrG8cb2)




それからしばしお喋りに花を咲かせ、ここは永遠の幸福を象徴しているようであった。



「昔のように踊らないか? お前が好きだったワルツを……」


老いていても、男性の魅力があるエスコート。昔はさぞ美麗な男性だったであろう。


「ええ、そうしましょう」


ここしかない。チャンスはここだけ。逃せば、私は殺される。



「お前は相変わらず美しいステップを踏む……」

感嘆の溜息を洩らしながら、幸せそうに微笑み、踊る。これが永遠に続けば───。


いいえ、永遠に続けばそれは、狂って壊れてしまう。だから、壊れる前に壊すの。


これが最良の選択でしょう? アン・ニディオ-愚か者-



「永遠に続くと良いですね」

ただ幸せそうに、精一杯演技する。


「いや、永遠に続くとも。私はお前を愛している。その愛が続く限り、終焉は来ない」


こんなに幸せそうな顔が、これから苦痛に歪む。大量の血を流し、断末魔の叫びをあげて。



「いいえ、続きませんわ。私が終わらせますもの」

お父様に反論の隙を与えないように、素早くナイフを抜き取り、そのナイフを左胸に刺す。



「お、お前……」

左胸を押さえて、その場に倒れる。皺の在る顔が苦痛に歪み、息を荒げている。



「いや、これで良かったのかもしれない───」

このままこの世界が存在してはいけない事を私は解っていた。
だが、どうしても手放す事が出来なかった───。



   「有難う。ラ・メイユール・レーヌ」