ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

第一話 ( No.1 )
日時: 2011/06/12 17:11
名前: ハッチしゃn (ID: X96rB3AK)


 『甲殻機動隻』———それは、我々”農民だった”者が少ない機材と図形図を基にして作った飛行船。

 今我々は、この『甲殻機動隻』に乗ったまま序列第一位『ディスファイアの都市』へ目指している。

 行動の動機は単純だ。それは、我ら『人間』が、神の座を得るため。

 もううんざりだった、と正直に言おう。
 毎度来る過酷な労働日々の中、我ら『人間』は、農作物を育てるように命令され、雨の日も風の日もなんとか我慢を耐えて働いて生き伸びてみた。

 だが、結果はどうだろう?
 育てて熟れた野菜、米、肉はすべて上位都市に奪われ、残り少ない食料で満腹感を満たされる。美味しくはない。美味しいものはすべて上位都市に奪われるのだから。

 孫や娘、大切な家族、友達とて、十分な栄養を与えられない。
 老人は自ら命を絶つ者まで出てきてしまった。

 もうこの怒りは抑えきれない。だから、我々は自らこの戦場に名乗り出た。
 将来の子供たちのために。
 人間の未来のために。


 そして我々は、『ディスファイアの都市』へ向かい、この世界のすべての司令塔である『神』を破滅させ、立場を逆転させるのだ。

 私は、目を瞑り、家族の顔を思い出していく。
 私には帰るべき場所がある。帰らなければいけない場所がある。


 『負ける訳にはいかない』
 そう決意し、目を見開いた。

 そこに映るのは、白い輝きを放つ綺麗に造形された都。
 緑と茶色にしか恵まれていなかった私には、目の前で輝く都に息を呑んだ。

 しかし、驚いている場合ではない。
 私は気を取り直し、皆の前へ振り向くと、決意ある胸を前にして。


 「—————行くぞ、我らの希望へッ!!!」

 皆の決意ある目を見て、志を見て、大きく言い放った。
 そしてそれは、

 戦いの合図だった————。