ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

第一話 ( No.3 )
日時: 2011/06/15 17:45
名前: ハッチしゃn (ID: X96rB3AK)

 あれから五年————。



 『死刑囚納船』
 今、私が乗っている飛行船の名前だ。

 この飛行船は、神が定めた法律などを守らない生きた生命体を運ぶ物。
 この飛行船に乗ってからの行き先は、序列第二位『地下と牢獄都市』だ。

 『地下と牢獄都市』は、むろん、名の通りの生き絶えるまで食料・水なしの牢の中で労働生活を送らされる都市だ。

 言う事を聞かない者をここに落とし、辛い苦しい思いをさせて生涯を終わらせる場所。

 なぜこんな所が序列第二位なのかは、簡単。
 神がそこをゴミ処理場として使っているから。だから序列を下げさせるわけにもいかないんだ。

 また、なぜここに私がいるのか?、というのも簡単である。
 家族の一人が、『ディスファイアの都市』へ行って以来、どんなに待っても待っても帰ってこないからだ。

 それを確かめるために、助けるために私はここに来たんだ。

 この『死刑囚納船』にも、まだ私と同じ境遇に見舞われて、付いてきた仲間が一人いる。

 私とはまた別の災難だったらしいが、どうしても付いてくると言うので許してしまった。
 こんな、『天使』ばかりがいる飛行船に。

 名前は『ウォン・ゲナー』、娘を助けると言っていたから、父親なのかもしれない。

 飛行船の座席で両手両足を縛られながら座っている私に、隣にいるウォンが、目周りのしわを寄せながら小声で聞いてきた。
 今は巡回している『天使』もいない。

 「おい、お前、名前はなんなんだ? これからこの飛行船、乗っ取るんだろ? 名前ぐらい教えろ」

 多少命令口調なのがウザいが、仕方がない。答えるべきなのだろう。

 「アリス。『アリス・エルセナ』だ」

 「アリス……か。アリス、飛行船を乗っ取るにしても、このあとどうすんだ?」

 まずは……そうだな。
 私は、横の自動ドアから出てくる『天使』を見計らって飛ぶ態勢をする。
 ここは、攻撃態勢で行くべきなのか、それとも見つからないように行動すべきなのか。
 考えれば考えるほど、次の一手を切り開けないように思えてくる。

 だから私は、「ウィーンッ」というドアが開いた音が鳴ってから、
 天使に向かって飛び蹴りをしつつ、先ほどの質問に答えた。


 「まずは、ここの天使を全滅させるッ!!!」