ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

第一話 ( No.4 )
日時: 2011/06/19 09:28
名前: ハッチしゃn (ID: X96rB3AK)

 「乗っ取るのはそれからだッ!!」
 私は、そう叫び、ウォンに片手で持てるくらいの拳銃を投げ渡す。

 「お、ぉおいッ! こんなん渡されたって俺撃った事なんてねぇぞ!?」

 いちいちうるさい。だったらなんで付いてきた!? と思うが、生憎今私の目の前にいるのは、少々手ごわい『天使』。
 長ったらしい話を交わしている場合ではない。

 「知るかッ!!」

と、私は切り捨て、肩に付けている鉄でできた片手剣を取り出し、天使に向けて構える。

 「私は前をやる。お前は後ろを援護しろ!」

 「う、後ろーーッ!? って、マジでいたんかよッ! お、おいアリ———ッ」

 やかましいのでもう構わない。
 目の前にいる、身体全体を白で覆われた人型の『天使』の顎を徐に片足で蹴り飛ばし、そのまま剣で顔面を貫通してやった。

 私が剣で貫通させ、天使の息の根を止めさせると、後ろでウォンに接近している二体の天使の後ろに疾走で回り、二体とも首を切断させる。

 一応、これで私達の周りにいる『天使』は殲滅させた。
 だが、まだ先を進めばいるだろう。『死刑囚納船』だ。あと数十人いてもおかしくはない。見張り役として今倒した三体だけでは、足りなすぎる。

 先ほど後ろの天使を倒さなかったウォンに、少し憤りを感じる。天使を倒せないのなら、足を引っ張るだけだ。いい迷惑であり、若干怯えているのが腹が立つ。だったら、どうして戦場に来たのか、ってな。

 その気持ちも含めて、私はウォンに言った。

 「この『死刑囚納船』にいるのが、『天使』だけとは限らないからな? 他の都市から来た魔物・猛獣が捕獲されているだろうし、まだ『天使』は、倒しやすい方だ。こんな所でもう戦えないって言うのなら、お前は引き下がってろ。いるだけ邪魔。そこの格納庫で怯えながら隠れてるんだな———」

 「ふ、ざけんじゃねぇ!!」

 私が言い終った瞬間、ウォンは怒号を放った。
 ウォンの視線は、すぐに私を見つめて眼前まで寄ってくる。

 「娘が、……娘が俺を待ってるんだ。俺が行かなきゃなんにもならねぇだろッ!? それに、俺にだってこの拳銃を使いこなせるかもしれねぇだろ! 可能性はあるだろ! 俺だって次からは、絶対闘う。一緒に!」

 「けどお前は、拳銃を撃った事もない! ろくに撃つ事も出来ないで、それでどうやって戦う!? 舐めてるのか?! その達者な口で、 戦えないド素人が胸を張れるほどの言い草ってのを言う気か!? ふざけるな!!」

 刹那。

 パァンッ!! と、怒鳴り声を言い放った私の前で発弾した音が鳴りつつ、何かが倒れる音が後ろから同時にした。

 後ろを振り向けば、『天使』が額を撃たれて倒れていたのだ。ピクリとも動かず、もう死んでいた。
 撃ったのは、紛れもない、……私の前にいるウォンだ。

 振り戻ってみれば、私が渡した拳銃を構え持っていて、先端からは発弾による火薬の煙と匂いが漂っていた。

 「これでいいだろ? これで俺も戦えるだろ? 娘を、この手で救えるだろ!?」

 私は視線を揺るがし、通路の床に着いている足元へ向かって舌打ちをした。
 これが、こいつの覚悟。だったら、もう一度確かめよう。

 眉を寄せながら、ウォンをもう一度確認するために、顔を真正面に向け直す。

 「本当に付いて来るんだな? 死ぬかもしれないぞ? 娘さんに会う前に」

 「そんなもん、もうここにいる前から覚悟決めてんだ。今更逃げてもなにもねぇ。だったら、娘を助けに行って死ぬなんてお安い御用だ」

 私は、その言葉に何も言う事が出来ない。そこまで覚悟をしていたのは、知らなかった。理解できていなかったのは、私だった。

 視線を下に向かせながら、通路の出口へと向かう。

 この飛行船にいる『天使』全体に私達の居場所は把握されている。早くこの場から離れなければ。

 私はただ、ウォンに向かって理解したと暗示するように頷くと、次にすることを伝えた。

 「付いてこい。ここから一旦、離れる。先に進んで、出てきた天使を片っ端から倒していく」

 「あ、ああ。分かった」

 ウォンは頷き、拳銃を下に降ろして私のすぐ隣へ寄ってくる。
 私は背中に剣をしまい、通路の出口のドアを開け、さらなる先へ急いだ。