ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 第一話 ( No.7 )
- 日時: 2011/06/20 17:53
- 名前: ハッチしゃn (ID: X96rB3AK)
『死刑囚納船・最上階』————。
もうこんなに上がっても、敵と呼べる者が何一つ現れなかった。
ありえない。ここは『死刑囚納船』だぞ?
私達が倒したあの三体だけで、この飛行船の見張り役が務められるわけがない。
「ここの飛行船の運転席前、つまりこの通路の奥にある両側や真ん中のドアから『天使』が出てくる可能性が高いな」
私は考えがまとまるとすぐにそうウォンに伝えた。
隣にいるウォンは、厳しい顔でまっすぐ目の前にある通路の両サイドや奥にある扉を真剣に見つめると、いきなり真っ青になって後ろに下がった。
「予想してなかったのか……?」
「いや、予想はしてたんだけどよ。まさかマジになってくるとは考えていなかった……」
「見た限り、必ずしも数十体はいるだろう。覚悟して前に進むぞ」
すぐ後ろで呼びとめる声が聞こえたが、無視して前に進む。
私達の目的はこの飛行船を奪うためであって、わざわざ地獄の『地下と牢獄都市』に自滅しに行くわけではない。
この飛行船の行き先に着く前に、なんとかして乗っ取らなければいけないのだ。
私が大体、扉との距離を縮めると、後ろからウォンがため息を漏らしながら走って側に寄って来た。
振り返ってみると、精悍さがある。覚悟を決めたみたいだ。
「ウォン、かなり後ろまで下がっていろ。今からここの扉すべてを破壊するからな」
私は言ったとおりにかなり後ろまで下がったウォンを確認すると、
———握っていた剣を横に振り捧げ、目の前と両サイドにある扉を斬るために、足と足の幅、腕と腕の幅を限界まで広げて、一気に力を入れて、勢いよく三回転斬りを喰らわした。
ガコンッガコンッ!!、と木材で出来た扉が三つすべて真ん中を横斬りで斬られ、音を立てて剥がれ落ちる。
予想通り、数十体の『天使』が姿を現した。
扉が落ちた音が合図だったかのように、皆一斉に私に襲い掛かる。
「襲い掛かるタイミングは良いんだが、————遅いなッ!!」
私は再び回り全体を巻き込んで、回転斬りをし、数体の『天使』に致命傷を与える。その訳はウォンが口で呟いてくれた。
「すげぇ……周りにいた奴らの顔面を全部吹き飛ばしやがった……」
『天使』は体内に液体などが含まれていないから、返り血を浴びずに済む。だから私は、ウォンが呆気に取られている内に、再び襲い掛かって来た『天使』を順序良く倒して行く。
ある時は横斬り、ある時はそのまま、まっすぐ天使の胸を突いて貫通させ、ある時は下から上に向けての返し斬り、など、いろんな剣技を使い、『天使』の数を減らしていく。
「悪いが、お前らに勝ち目はない。接近戦は、私が一番得意とする戦い方だからなッ!!」
私は眉を寄せながら、次に襲撃を掛けてくる『天使』共に吐き捨てる。
同時にもう一度構え直し、態勢を整える。
そこで、少し息が荒くなっているのが自分でも分かる。剣を腕で持ち上げるだけで腕の筋肉が痛みを訴える。
しかし、それでも。
この、あと数体を倒せば飛行船を鎮圧できるのだと、思えば闘争心は燃える。
私は口から一喝を放ち、天使の中心へと構えて走って行った。