ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

第一話 ( No.8 )
日時: 2011/06/22 18:29
名前: ハッチしゃn (ID: X96rB3AK)


 私は、手で握っている剣を天使の胸元から抜き出し、震え落とす。
 鉄の剣が床に鋭い音を響かせ、振動を伝える。

 息が荒く、若干額に汗が滲み出ている。

 私の右腕の限界だった。限界が来ている右腕を垂らし、左手の甲で額の汗を拭い、落とした剣を汗が付着した左手で持ち上げる。
 そのまま背中の剣入れに戻し、まだ痛みが走る右腕を左手で震えないように抑える。
 私の疲労困憊の状態に心配したのか、後ろから声が響き伝わる。

  「お、おい! 大丈夫か!?」

 焦り声を上げながら、後ろから私の元へウォンが戻って来た。
 私の周りには数々の天使が息を止めたまま横倒しに倒れている。すべて私がやった。ウォンは足でそれらをどかし、私の元へ来る。
 私は先ほどの問いに返答した。

 「ああ。……大丈夫だ。少し、右腕が痺れているだけ」

 「なんだ、本当にそれだけか? 汗も出てるし、痛みがあるんじゃないか?」

 まったく心配性だな、と思いながらも、正直に私は痛みがあると頷いた。
 頷いた後から処置的なものをすると思ったので、その誘いを拒むために運転席へと急ぐ。

 「ちょ、ちょっと待てよ! 痛みがあるんだったら少しくらい休めよッ!」

 「時間がないって言ってるだろ。もしかしたら操縦役の『天使』が私が倒した集団の中に紛れていたかもしれないんだ。飛行船がこのまま落下したら残るものはなにもないぞ?」

 それも、そうなのか? みたいな顔をしたウォンを見て、呆れた私は、奥にある扉(だった入口)へ近づいて行く。

 そこはこの飛行船の運転機関室であり、この飛行船を操作する操縦席である。
 入ってサイドを見れば、やはり間違いではなかった。しっかりと操縦席があり、横には運転機関の機器が数多くのコードで繋がっているのだ。

 ためらいもなく操縦席に座り、前にあるモニターと数々のボタンを見て行く。
 モニターには現在の位置があり、全体図を表わしていた。
 モニター前の私の手が一番付きやすい所には、操縦用(飛行船の高度を上げるモノ)のレバーがある。

 操縦席の側に来たウォンを前にして、私は伝えた。

 「なんとか操縦できる。見たところ、天使の文字や数字は私達人間と同様らしい。このまま『ディスファイアの都市』へ直行する」

 「お、おう。分かった。真っ直ぐ神都だな」

 私はウォンの了解を聞き、操縦し始める。
 レバーを手前に引き、モニターのマップにある『ディスファイアの都市』を目指して運転を開始した。