ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 第一話 ( No.9 )
- 日時: 2011/06/24 22:29
- 名前: ハッチしゃn (ID: X96rB3AK)
『ディスファイアの都市』————。
人間が古き昔から、そこに行っては未帰還者が増えた。
まるで私達人間が、立ち入ってはならない領域に侵入したから罰を与えるように。
確かに、私達の故郷の遺跡にある石碑には『人間は都市で生きる権利はない』と書いてあったが、そんなことでこの世界のあらゆる生態系が成り立っているとは思えない。
なぜか、そう思う。
私達人間が農作物や果物を育て、それを私たち人間が食べず、他の都市に輸出させているとか、そんな理不尽な事があって良いのだろうか? と、いつも思う。
あれは人間には”味覚”があるから甘かったり、すっぱかったりの酸味が詰まった果汁、甘い果汁などがあるわけだ。
人間ではない生き物が住み付いている”都市”に、人間と同じ味覚など持っているのだろうか? だったら、人間ではない都市で生きている生物も、私達と同じように序列第六位の『パラメキア』に住めば良いことだ。さほど変わらないだろう。生物という中では、今までよりさらに良い快適な生活が待っているはずだ。
では、なぜ都市と別々に住んでいるのか。
深く考えればおかしなことが浮き上がって行く。”しなくてもいい事”までもが、この世界では実現されているんだ。
それを確かめる、というのも私が神都に行く事を決意した理由だ。
だから、
「……必ず、『神』とやらに会いに行って、目論見を吐かせる」
私は両手でレバーをバランスを保つように、左右交互に引いたり戻したりして『死刑囚納船』の速度を上げながら、小さくそう口に出した。
ウォンが隣の助手席に座りながら「なんか言ったかー?」と、訊いてきた。
私は鼻で息を吸ってから、「なんでもない」と、伝えて置く。
これは私個人の引っかかる疑問点であり、娘を心配しているウォンには関係がないことだ。いや、正しく言えば、アイツに言ってもなんにも利益がなさそうだから言わないだけだが。
そしてついに、私達の視界から輝くクリスタルの都が見え始めた。
進めば進むほど思っていたが、どうやら『ディスファイアの都市』は、上空の成層圏の高さまで浮上しているようだ。
通りでいつも『ディスファイアの都市』を地上から眺めていても、都市全体の影で見えづらかったわけだ。これで雲が現れれば、地上からは何も見えない。
鳥の翼みたいなクリスタルが何十羽も都市を囲んであり、中心には黄金と銀で作られた巨大な西洋型の城が佇んでいる。城の金と銀の場所が太陽の光で目が焼かれそうなほどの光を反射して照らし合わせている。
驚いている場合ではない。私達はすでに操縦席から離れて、『死刑囚納船』の出口へと向かっていた。
出口の扉を開けて、そのまま飛び込むことにしているんだ。
それは私たちがいた、運転機関室のすぐ後ろにあったため、降りる準備はとっくに出来ている。まぁ、私だけだが。
「って、おいおい! 待ってくれよ! 飛び降りんの!? 娘に会うとか、神に会うとかの前に、死ぬじゃねぇかァ!!」
唾を飛ばずに話すのも気に掛けていられないのか、唾を飛ばしながら焦りを隠せずに慌てて必死に話しかけてくる。
ここはおとなしくさせておこう。
飛び降りるにも、無駄に心拍数を上げていたら、血圧が一気に上昇して意識が飛んでしまう。そうならないためにも。
「大丈夫だ。私がいる。飛び込むのは一人じゃない。安心しろ」
「ど、どう安心しろってんだッ! こ、こんな高さから落ちたら、し、死ぬしか道がないだろ!」
「大丈夫だ。ここから落ちたって、多少怪我をするくらいだ。死にはしないさ。それに」
「お、おぉおいッ! 今、今”多少怪我する”って言ったよな! 言ったよな!? 結局無傷でなんか降りれないのかよ…ッ! く、くそ————」
「———悪い、今しか飛び降りれない!」
私は出口から見える高度から見て、早口でそう言った。
ウォンの心の準備に構っている時間はない。次の一声で、私はウォンの右手を握って出口から颯爽に飛び降りた。
「—————行くぞッ!!」
「ちょ、ちょーーー待ってくれぇえええええええッ!!」