ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

第一話 ( No.10 )
日時: 2011/07/02 14:28
名前: ハッチしゃn (ID: X96rB3AK)


 私の正面。目の前。視界に映る上は青い空。下はディスファイアの都市。

 それらが今、次々と有余を与えずに迫ってくる。
 体は関節が外れそうなほどの勢いで風速が体全身を巡って行き、私の長い髪の毛はその風の荒々しさによって分け目がどこにあるのか見分けられないほどに、落下速度による疾風でボサボサになってしまっている。

 頭を下にしないように、右手で繋いでいるウォンと合わせてゆっくりと大の字に体の関節を拡げて行く。

 そうすることで、落下速度は少し遅くなり、落下と上昇が身に重なる。
 圧力が掛かるため、速く都市の地面に着地しなければいけない。
 ここから先は私が先行を取った。

 「一回離せ!!」

 「お、おうぅ?!」

 なぜ離すのかは分かっていないようだが、ちゃんと応答もして、指示通りに手を離してくれた。

 ウォンはそのまま大の字のまま落下するが、それよりも速く私が都市に着かないといけないので、頭を下にして、体をまっすぐ下にし、全体重を都市の地面へ目指して落下速度を上げる。

 「お、ぉおおい?! な、なにをやって————」

 ウォンが一人になって焦りだしたが、今は集中しなければ致命傷が待ち受けている。

 防護服のポケットから私は風圧に耐えながら、『電磁弾』を取り出し、それを目前に迫るディスファイアの都市のクリスタルでできた地面へぶん投げる。

 それはちょうど500mほど離れている私の頭上の位置と同じ場所で付着地し、紫色の磁界が広がる。
 私は磁界が展開されるのを見つつ、ポケットからもう一つ『防電弾』を取り出す。これを胸辺りに抑えて持っていれば、電子が私の体を包み、地面に着いた磁界に拾われるんだ。また、強力な磁力から物体に当たるダメージを軽減できる。

 無事には着地できない代物だが、打撲程のダメージだけで着地できる。頭を割られて死ぬよりはマシだ。

 「——————ぐぅっ!!」

 強力な磁力に体が引っ張られ、クリスタルの地面へと投げ出される。普通に地面へ当たれば、あばらが折れるだろうが、『防電弾』によって、磁力を断ったので、多少高いところから落ちた程度のダメージが、体全身へ与える。

 「っ!! 〜〜〜〜ッ!!」

 歯を食いしばりながら、体に走る痛みに耐え続ける。
 息が荒れ、特に腕や背中が麻痺をしている。

 しかし、こんなところで痛みに付き合っている場合ではない。

 私は震い上がる腕で上半身から起き上り、残り最後の『防電弾』を取り、上空からこちらに落下してくるウォンに向かって、力を振り絞りぶん投げる。

 その『防電弾』はウォンのおでこにちょうど命中し、電子を展開させる。
 まさかの額だったから、少し笑みが零れてしまったが、当の本人はそんなことに気を掛けている余裕はなく、地面に当たると認識して、この世の終わりみたいな顔をした。

 そして『電磁弾』による磁力がウォンを引っ張り、こちらに着地させる。


 「イッテぇええええっ!! 死んだ! マジで死んだ!!」

 痛みに敏感な方だったのか、着地した瞬間に、打撃による痛みで跳ね上がり、体全体の痛みを和らげようと必死になっている。

 男が頑丈な体で作られているとは兄から聞いていたが、まさかここまで痛がる人間がいるとは信じられなかった。

 私は少し、元気そうなウォンを見て、面白おかしく笑ってしまう。

 「ふ、はははっ」

 「わ、笑うなっての!!」

 腰辺りを押さえながら言われても、笑いが止まらないだけだ。
 まるで、何をしにここに来たのか少し見失いながら、笑みが止まらずにいた。

 しかし、ゆっくりと。
 私はディスファイアの都市へ来たのだという感覚が、実感へと変わって行くんだ。