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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 地獄生活脱出法。 ( No.11 )
- 日時: 2011/02/03 22:24
- 名前: 真由子 ◆NCebuCi9WY (ID: sX8dkNn6)
『愛する人』
2036年3月12日 午後4時。
悠之介はその日、ある人の元へ向かっていた。
彼女———・・・、茶川和葉の元へ。
第三次世界大戦が始まって既に8日も経っている。
まだ悠之介の暮らす幻繋市には敵軍は来ていない———・・が既に日本では約300人程の死者が出ているという。
とにかく、和葉に会いたい。悠之介は足を速める。
*
いつの間にか悠之介は、和葉の家の玄関にいた。
お願いだからいてくれ、と思いながら和葉の家のインターホンを押した。
ドアがゆっくりと開く。
警戒しているようだ。
和葉—————・・・。
心から安心した。
「あっ!悠・・!会いたかったよ・・。」
和葉は涙をためた目で言う。
泣くなよ、お願いだから。
そう言いたかったけど、何故か言えなかった。
「俺も、会いたかった。不安でしょうがなくて、怖くて」
本当に日本はどうなってしまうのだろう。
まわりには敵だらけじゃないか。敵、敵、敵。
ひょっとしたら和葉も敵になってしまうのかも知れない。
何てことを考えてるんだ、俺は。この戦争で死んだ人の分まで。
俺は絶対に生き残るんだ、そして馬鹿な天皇と総理大臣に復讐してやる。
所詮、人間なんて弱い。
嘘を吐いて自分を実際よりも美しく着飾っている。
なんと醜いんだろう。
「とりあえず、今は生きる事だけを考える。現在のアメリカやイギリスは日本よりも高い技術を持ってるし、下手をすれば日本が全滅するかもしれないから」
和葉は俯いた。
そうとう辛いんだろう。
「私、嫌だよ戦争なんて。」
それは誰だって同じなんだ。
誰もがそう思っている。天皇と総理大臣を除いた人意外は。
「俺も嫌だ——・・だけど今は前を向いて真っ直ぐに進もう」
悠之介がそう言い終わった途端、警報が響き渡った。
とうとう幻繋市にも敵軍がやって来たのだった。
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