ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 地獄生活脱出法。 ( No.12 )
- 日時: 2011/02/04 22:59
- 名前: 真由子 ◆NCebuCi9WY (ID: sX8dkNn6)
『逃』
空は灰色に曇っていた。
いやな天気だった。
空には無数の敵の飛行機が飛んでいる。
「逃げろ!!」
咄嗟になって走り出す。
現在19歳の悠之介は中学の頃陸上部だった。
短距離、長距離のどちらも得意としていた。県や市の大会でも毎回入賞していた。
現在18歳の和葉も悠之介ほどではないが中学時代は学年女子で1位だった。
大勢の人がこちらへ逃げてくる。
「和葉!手!」
悠之介は和葉に手を差し伸べる。
和葉は息を切らしながら悠之介の手を握る。
手から「死にたくない」と言う思いが伝わってきた。
俺だって、死にたくないよ・・。
「川だ————!!!川へ逃げろ————!!!!」
叫ぶ声。
悠之介と和葉は必死になって走る。
悠之介は上を見た。
こんな場合のときでも天気が気になった。
空は相変わらずだった。
一つ違うのは、「火」が降ってくるという事。
「な・・何だ、アレは」
恐怖で足が竦む。
動かそうとしても動かない。
「火」に釘付けになっていた。
「ちょ、悠之介!?死んじゃう、死んじゃうよお!」
和葉が泣きそうな目で悠之介を見る。
後ろできゃあああああああと言う女性の叫び声が聞こえた。
女性は火達磨になって地面を転がる。
周囲の人間は怯えた目で女性の事を見た。
そして過ぎ去っていく。
「熱い、熱いよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
断末魔の苦しみ———・・。
やがて女性の声は消えてなくなった。
ある事を思い出した。
悠之介の近くの家が火事になった時の事。
その家には悠之介と同い年の女の子がいた。
その子は火元の部屋にいたという。
火はあっという間に女の子の家を包み込んだ。
そして、何もかも無くなった。
「悠之介!何してる・・の!ひっく・・死んじゃう!ひっく・・・。」
悠之介はここで現実に引き戻された。
和葉は泣いていた。
「ごめん、和葉」
火は悠之介と和葉の近くまで迫っていた。
悠之介は舌打ちをした。
天皇め・・、必ず復讐してやる。
「和葉、俺に乗れ」
悠之介は膝立ちをし、和葉に言った。
「で・・でも」
和葉は迷っている。
悠之介におぶって貰ったら逃げ遅れて死んでしまうかもしれない。
「いいから乗れ!」
和葉の気持ちを察しているかのように悠之介は言った。
悠之介は和葉を背中に乗せると猛スピードで走り出した。
背中から和葉のすすり泣く声が聞こえた。
こんな人殺し、終わらせてやる。
一日でも早く。