ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 地獄生活脱出法。 ( No.13 )
日時: 2011/02/06 11:13
名前: 真由子 ◆NCebuCi9WY (ID: sX8dkNn6)

『狂い』


「雨———・・。」

和葉が呟いた言葉に、悠之介は空を見上げた。
空を見上げた悠之介の鼻に雫が落ちる。
今だ川に向かって走っている足は悲鳴を上げている。
たった何分しか走っていないのに、何時間も走っているような気がする。

周囲は火だらけで、今までにどれだけ死んだ人を見た事か。

悠之介と和葉は恐怖心でいっぱいだった。



沢山の人が殺されている。

怖い、怖い、怖い、怖い。


後ろに死神がいるような気がする。
悠之介は走り続けた。


火と雨が一緒に降り注いでいた。
もし、悠之介に火が当たっていたら和葉と一緒に火達磨になり、消えてあの世逝きだろう。


悠之介は何かに取り付かれたように走る。
雨は増すばかりで、熱くなった体に気持ちいい。

やっと川が見えてきた。

冷や汗と雨でビッショリと濡れた額。

川が近ずいてくる。

悠之介は和葉を背負ったまま川にダイブする。
川には大勢の人が居るというのに。
「きゃああああああ!!?」
和葉が叫ぶ。

ザッバァァァァァァァァン!!!

周囲の人間は、迷惑そうな目と怯えた目で悠之介を見つめる。


「悠———・・?」

和葉は心配そうに悠之介を見つめる。
今の悠之介にはその目さえも鬱陶しかった。

今の悠之介の頭には天皇への怒りでいっぱいだった。

川の中には「お母さぁぁ———ん」と泣く子供や泣きながら我が子を探す母親らしき人が大勢いた。
悠之介の我慢は限界に達した。


「天皇ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!出てきやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!ふざけるな!人が殺されるのを見てて楽しいかぁぁぁぁぁぁぁ!!まってろ、俺が今すぐお前の事を殺してやるからよぉぉ!!あっはっはっはっはっはっはっは!!!!」

和葉は唖然としていた。


狂った。


泣いていた子供はますます泣き出した。
周囲の人はひどく呆れた様子で悠之介を見つめた。
だが、今の悠之介にはそんなものは微塵たりとも気にならなかった。