ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 地獄生活脱出法。 ( No.16 )
- 日時: 2011/02/06 19:28
- 名前: 真由子 ◆NCebuCi9WY (ID: sX8dkNn6)
『目』
雨はいつの間にか止んでいた。
「お前、これからどうするんじゃ?」
雄鬼は悠之介に訊いた。
悠之介は苦笑した。
「どうしよ、何処も彼処も黒焦げだもんなぁ」
辺りは焼け焦げて真っ黒だった。
和葉はさっきから俯いたままだ。
構わず二人は話し続ける。
「それにしても、天皇は何を考えてるんだ」
雄鬼は怒りの篭った口調で続ける。
悠之介は頷く。
「で、これからどうする?俺は家の様子を見に行くんだけど」
「俺もいっていいか?」
雄鬼が訛った口調で返す。
「いいぞ。」
和葉は黙ったままだった。
「お前・・和葉ちゃんだっけ?さっきから黙ったままじゃぞ?」
雄鬼は立ち止まって和葉のほうを向いた。
和葉は壊れたパソコンみたいに動かなかった。
壊れたパソコン——和葉は何度声を掛けても揺すっても動かなかった。
「和葉——・・?どうしたんだ?話せよ——・・」
嫌な予感がした。
まさか、まさかな。とその事を切り離そうとしたが頭にこびり付いて離れない。
「目が———・・・」
ま・・・まさか・・・・・・・・・。
和葉は涙声で耳を凝らさないと聞こえないくらいの小さな声で言った———・・。
「目が・・・・・目の前が真っ暗で何にも見えない———。」
和葉の目から涙が溢れ出した。
二人の予感は的中した。
「う・・・嘘じゃろ——・・??」
本当は嘘じゃないと分かっているけど口から出てしまった。
雄鬼の声は震えていた。
悠之介の肩も小刻みに震えている。
その目は赤く充血していた。
「嘘だ————・・。夢だ、これは全部夢だ、戦争なんて夢だ!!夢だ、夢だ、夢だ、夢だぁぁぁぁ!!!覚めろ、覚めろ!!覚めろぉぉぉ!!!!うああああああああああああああああっ!!」
けれども夢は覚めなかった。夢じゃないから。
悠之介はその場に崩れ落ちた。
頭の中では、
覚めろ、覚めろ、覚めろ、覚めろ、覚めろ
と言う3文字しかなかった。