ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: —GAME 鮮血の薔薇と漆黒の銃— ( No.14 )
- 日時: 2011/03/13 18:37
- 名前: 瀬蒼 ◆baXqm01I8Q (ID: FzVK5xRK)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode
「はぁっ はぁっ」
息を荒く、肩を上下させながら停止する。膝に手を着き、前屈みになりながら酸素を取り込む。
や、やっと着いた。 以外にあそこから遠かったな。
目がいいのってのもあまり嬉しくないな。
この生き埋めが見えてなったらこんなに走る事もなかったしな。
「はぁっ… ふぅ」
だいぶ息が落ち着いてきた所で真っ直ぐ立ち上がる。
目の前の瓦礫に埋まっている人に声をかけようとして口を開けた瞬間——
ダンッ!
瓦礫の山の、丁度てっぺん。 銃弾が紫色の天空に向かって突き出していく。
いきなりの銃声と鉛弾に面喰らった俺が唖然としていると、続けざまに
ガガガガンッ!という拳銃を連射する音が聞こえてくる。
しかもずっとてっぺんから銃弾が飛び出してくる。
……中の人が撃ってるんかな。しかも連射で。
上に乗っかっていた瓦礫がその銃弾に耐え切れずにバスン!
音立てて明後日の方向へ飛んでってしまった。
「ったく… いきなりこれとは予想もしてなかったですね」
瓦礫の中から聞こえる、まだ幼さが残る声。
よっと、と声を出しながら瓦礫から這い出てきたのは—
(女の子——?)
かなりサイズが大きいのか橙色のダボダボパーカーを着てぴっちりとしたジーパン。
靴は黒いスニーカーを履いていた。
手はお腹に着いているポケットに右手のみ突っ込まれていた。
左手には撃ったばかりだと思われる漆黒の銃が煙を吹いている。
栗色のセミロングを揺らし、目は黄金。唇もきゅっと結ばれていて桜の蕾の様。
肌は真っ白で降ったばかりの雪のよう。 頬は僅かに桃色に染まり雪のような肌を彩る。
フードを被っていたので分かりづらいがかなりの美少女だ。
CGで整えたんじゃないかってぐらいの端整な顔立ちだ。
だがその表情は無表情。 しかも言い様のない恐怖感を感じる。
年は…10代中盤あたりか。
その少女は体重が無いような身軽さで瓦礫の上にふわっ。 と立つ。
手に持っていた拳銃をくるくると流れるような仕草で太股のホルスターに仕舞う。
「気が進まないですね… あの人の命令とはいえ…」
俺はそんな事をぶつぶつと呟く少女を唖然と見上げていると、
その視線に気がついたのか、俺をきょとんとした目で見下ろす。
数秒、見つめ合う、俺と少女。
流れる沈黙。
「…何時からそこにいたのですか」
さっきの声とは裏腹に全身が竦む様な、いかにも棒読みな抑揚な声。
恐怖だけが感情を塗りつぶす。 何故か分からないが俺の心が「こいつは危険だ」と知らせてくる。
「いや別についさっき…」
と早口で捲くし立てる。 とても早く此処から立ち去りたい。そんな気分だ。
少女は瓦礫の山から降り立ち、俺と少し離れた場所に立つ。
身長は—以外とあるな。 160はある。
「…ま、いいです。 そんな事よりも早く腕試しがしたいんで」
「腕試し…?」
「そうですよ。 貴方の実力を見るのも兼ねて私の腕試しです」
何だこいつは。 いきなり何を言い出すのかと思いきや「腕試し」?
よく意味がわかんねぇな。
「一体何の腕試しだよ」
と聞くと同時に——
ちゃき。
目にも留まらぬ速さで俺に向けて拳銃を構える。
照準は—俺の頭。
「貴方も早く抜いて下さい。 拳銃は持っているのでしょう?」
拳銃を此方に向けたまま呟く。
突然の事に何の対応も出来ない俺は「え?」と呆然とするばかり。
今、こいつが、俺に、拳銃向けてる?
「…抜かないのですか? じゃないと殺します」
「こ…ろす?」
無表情で淡々と告げてきた言葉はとても残酷なものだった。
俺は頭での理解が追いつかず混乱するばかりだった。
こいつは何を言ってるんだ。
俺を、殺すのか——?
こいつが、俺を——「殺す」
「…時間切れです。 では」
と告げで引き金を何の躊躇もなく引いた。
鉛弾が、俺の額を狙って飛んでくる。
コイツ—— マジで撃ちやがった!
パァ…ン
と銃声の乾いた音が廃墟の町に響く。
俺の額を狙った鉛弾は後ろにある瓦礫にしゅうう…と音を立てて埋まっている。
俺は目がいい。 何度も言うがな。
そのお陰でコイツの指が動く瞬間などを見切って体を横にずらして流したのだ。
さっきは目がいいのは嬉しくないと言ったがここでは助かったな。
目が良くなかったら今頃頭から血ぃ出して即死してたな。
コイツは俺が見過ごした銃弾を見て少し驚きの表情を見せる。だがすぐに無表情に戻る。
そして俺をまじまじと頭からつま先をじっくり見始めた。
…こうやって美少女に見られるのは非常に恥ずかしいな。 と俺が少し赤くなっていると、
「…ふむ。 いいでしょう。貴方は合格者です」
「合格者…?」
何言ってるんだコイツは。 さっきから意味の分からないことばかりぶつぶつ言いやがって。
と頭上にはてなマークを浮かばせていると、
——もっととんでもないことを言い出すのであった。
この物語を始める最初の言葉を。
「ではこれから、私は貴方の物です」