ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: —GAME 鮮血の薔薇と漆黒の銃— ( No.15 )
- 日時: 2011/03/21 16:59
- 名前: 瀬蒼 ◆baXqm01I8Q (ID: FzVK5xRK)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode
「……は?」
俺はポカンと口を開けて呆然と立ち尽くす。
な、何いきなり言ってやがるんだ。
何か言おうとしても何も言えずに、酸欠の鯉の様に口をぱくぱく口をぱくぱくさせる。
いきなり意味不明な事はぶつぶつ言い出すわ、俺に向けて銃は撃つわ。
合格者が何たらとか。そして挙句俺の物になるだって?
はっ、意味不明すぎて笑えるな。
「ではこれを」
と目の前の美少女は左手に握っていた拳銃を太股の付け根に付けてあるホルスターにしまうと、
ポケットに突っ込んでいた右手から俺に向かって何かを投げてくる。
その投げた物はキラッと一度光ったあと、そのまま俺の手に綺麗に落ちてくる。
反射条件に軽く握ってしまう。 手の中にチャリ、という軽い音とゴツゴツした感触がする。
何だこれ——と思ったときに一瞬、嫌な予感が頭をよぎる。
ま、まさかこれ爆弾じゃないだろうな。
さっきまで俺に拳銃向けて撃った奴だ。有り得るかもしれないぞ。
とビクビクしながら自分の手に目線を下げて行くがそんな物騒な物ではなかった。
眩い光を放つ銀白のネックレスだった。
トップはよく分からない文字が彫られた指輪が通してあった。
その指輪は意外とでかい。 だが人の指は入らなさそうなサイズだ。
は? 何なんだよこれ。 これを俺に着けろって?
俺は自分の手とこいつに視線を往復させている。
2,3回程往復させて何これ?という視線を送る。
と、奴は面倒臭そうに眉を潜めて俺を見る。
いや——違う。 俺ではない。その後ろを——
ダンッ!
奴は撃った。 さっき仕舞ったばかりの拳銃を抜いて。
右目のスレスレのところを銃弾が音速で通過する。
スニーカーでジャリッと埃っぽい地面を蹴り出して奴は駆けて来る。
俺がいきなりの事に硬直しているとまたもや2発程発砲する。
こちらの銃弾も俺の身体スレスレに通過していく。
ヒュンッと耳障りな銃弾が通過して行く音が近くで聞こえる。
「あ…ぐ」
と後ろから俺でもない、奴でもない誰かの喘ぐ声が聞こえる。
硬直が解けて振り返るとさっきの銃弾が当たったのか脇腹を押さえながらくの字に折れ曲がっている
男性がいた。 30代ぐらいの。
押さえてる脇腹にはじわじわと赤い鮮血がTシャツを濡らしていく。
そして右肩、左腿にも紅い血が銃創から溢れ出す。
そしてヒュッと短い音がしたかと思うと奴は駆けて俺の横を通り過ぎる。
ふわっと一瞬、石鹸の様な香りが奴からしたと思うとその風は直ぐに行ってしまう。
奴は男性に向かって下から蹴り上げた。
丁度くの字に折れ曲がっていた男性の腹部に。
男性は目をこれ以上無いほどに開き、呻きながら見事なまで飛ばされてしまう。
「な…ッ」
俺がそんな一瞬に声を漏らすがお構いなしだった。
そのまま奴は飛んでいった男性めがけて走り続けた。
——なんてスピードだ。
そこいらの陸上選手よりも速いぞ。まるでジェット機でも付いているかのようだ。
男性には直ぐ追いついた。 奴は横たわっていた男性の腹部に足を乗せる。
苦しそうに小さくうぐっ、と呻くのが聞こえた。
奴は俺に背を向けながら男性の頭向けて拳銃の照準を合わせる。
「ひっ い、嫌だっ やめてくれ!」
男性が目を見開いて必死に抵抗しようとするがさっきの銃弾が効いてるのか、思うように動かせていない。
「ではさようなら——」
淡々にそう告げて、タァ……ン。
撃った。さっきと同じ様に何の躊躇もなく。
男性の額にはど真ん中に撃たれた後が。じわじわと血が噴出してくる。
目を見開いたまま、即死だった。 頭がかくん、と横を向く。
「そうだ、そういえば自己紹介がまだでしたね」
煙を上げる拳銃を下げながらくるっと振り返る。
硝煙の匂いが立ち込める中で呟いたのだった。
「私は朝露 澪紅です。 16歳の殺し屋をやっています」
——それが彼女の正体だった。