ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: —GAME 鮮血の薔薇と漆黒の銃— 参照200突破…ッ!? ( No.36 )
- 日時: 2011/03/27 17:49
- 名前: 瀬蒼 ◆baXqm01I8Q (ID: FzVK5xRK)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode
パチパチッ
目の前の焚火が火の粉を上げて弾ける音がする。
暗闇に浮かび上がる轟々と燃え盛る焔。
その焚火を挟む様に座っているのは俺と澪紅。
この埃っぽい空気の中に気まずい空気が混ざる。
澪紅は何処見てるんだか、何もない虚空を見つめている。
はっきり言うと不気味だ。
…よし、どうしてこうなってるのか順に追って説明しよう。
澪紅にはっきり言われてからは気まずさもあってか一言も話し掛けなかった。
そのまま廃墟巡りは続いたが、元から薄暗かった紫色の空は闇の如く漆黒に包まれ血を連想させる真っ赤な月が上った。
少しずつ姿を現す星も紅かった。
恐ろしい空を見上げながら無言でついていくと澪紅は1つの廃墟に入っていた。
…まだ探すのかよ、と俺が脱力していると。
その廃墟の真ん中にすとん、と小さい尻を落とす。
廃墟巡りで小枝等、拾っていたものをざらざらーとその場に置く。
何をするつもりだ?とその様子をまじまじと見つめていると
そのままポケットから小型ライターを取出しカチッと火をつける。
乾燥していた小枝は直ぐに引火し、大きな炎となって燃え始める。
そして澪紅は俺に「座れば?」みたいな視線送って顎で自分の向かいを示す。
今だ状況が飲み込めてない俺は頭上に「?」マークを浮かべながらもその焚火に近づき澪紅の向かいに座る。
とそういう訳で冒頭に繋がるわけだ。
全ッ然分からない。此奴の意図が。何を考えてるのさえもわからねえ。
「はい」
といきなり無表情でスッと音もなく俺に何か差し出して来た。
白魚の様な細く長い指に握られているのは、缶詰…?
「今日の夜ご飯です。 さっさと食べてください」
ずい、と淡々と言い放ってさらに缶詰を突き出して来た。
「お、おう」
いつの間にか温かくなっている缶詰を受け取る。蓋は既に開けてあった。
この火で温めたのだろうか。考え事してる間にか?
ていうか食料あったのかよ。
「食い物あったのか」
思ったことそのまま口に出すと自分の分の缶詰を開けている最中の澪紅に問い掛ける。
「一応、私の食料を使いました。 食料も尽きるのが時間の問題ですけど」
棒読みな感じで言い放つとぱきっと蓋をへし折る。
蓋を其処ら辺に置いて缶を開ける為の金属についている輪にジャラジャラとした金属が下げられている。
そのジャラジャラの中から何かを探しているようだった。
「…何だよそれ?」
「十徳ツールです。 ナイフや缶詰開けなどスプーンなども付いてます」
俺に金属のジャラジャラを見せてくる。確かに良く見ればスプーンやらナイフやらが付いている。
俺にスプーンを渡しながら説明してくれる。
でもさ思ったが、こういうサバイバル?みたいのに此奴慣れてるような気がするな。
じゃないと缶詰やらツールなんか普通持ってないだろ。
…殺し屋だからこういう状況とか良くあるのかな。
と、殺し屋で思い出したがその「殺し合い」だかについて聞きたかったことを聞くか。
「あの、重要な事で聞きたい事があるんだけど」
と缶詰の中の鯖を突きながら澪紅に炎越しに話し掛ける。
今まさに食べようと鯖を口を開けた瞬間に、俺が話し掛けたもんだからピタ、と止まってしまう。
ちょっと間抜けな面だってんで少しぷっ、と吹き出してしまう。
「…何ですか」
「あ、ああ悪い悪い。 ちょっとその『殺し合い』とやらで聞きたいんだが。食べながらでいいから」
ちょっと怒った様な顔から『殺し合い』の単語を聞くと少し神妙な面持ちになる。
でもほとんど無表情には変わりはないけどな。
「その『殺し合い』というのは分かったんだが、それは何時まで続けるんだ?」
「それは分かっていません。 本部から聞いた話では連絡を待ってろと待機命令しか頂かなかったので」
「本部… というと?」
「殺し屋の上の方、私の上司に当たる方です。 その人からの命令なので私は此処に連れてこられてるんです」
へえ、殺し屋に上司とかいるんだ。 組織みたいなもんなんだな。
じゃなくて、ゲームをクリアしてないのに此処に来てるのか?
ま、ますますこのことに謎が深まった。
「じゃあ、どうやって此処に来たんだよ?」
「このゲームの製作会社とやらに連れて来られて大きいカプセルの様な物に入れられて気が付いたら此処にいました。
殺し屋としての技術を磨く為とかだとあの人は言ってましたけど」
だから瓦礫から這い出てきたときそんな様な事言ってたんだな。
てか殺しの技術磨いちゃ駄目だろう。 まあそれが仕事なんだろうけどさ。
鯖を一口食べながら喋り出す。
「ゲームだから何もしていいとも言われましたね。 帰り方はまた連絡する、とだけ言ってました。
今気が付けば、此処に来て連絡なんて出来る訳ないですのにね」
その上司とやらも無責任だな。どうせ一人で何とかやれってことなんだろうけどな。
「では私はもう寝ますので。 いつまでも起きていると寝不足に落ちって朝は体調不良に陥りますので」
カラン、と缶詰の缶をフォークと共に脇に置いて立ち上がる。
早いな、殺し屋ってのはそんな早く寝るんかよ?
寝不足で朝は眠くて体調不良って… 徹底してるなあ。
「あとマスターは起きてて敵の襲撃に備えていてくださいね」
「は? 意味わかんねーよ」
「だから、もし私達が寝ている時に誰か襲撃して来たらどうするんですいか。そのまま殺されますよ」
本当、徹底ぶりだな! つまり俺に徹夜しろってかっ?
俺だってそんなことしたら寝不足で体調不良になるぞ!
「もし誰か来たら急いで起こしてくださいね。ではお休みなさい」
澪紅が俺に有無を言わせないで背を向けてコンクリートに横になってしまう。
その時丁度焚火の火が消えて真っ暗の闇に包まれてしまう。
唯一は壊れた窓から入ってくる真っ赤な月の光だった。
「はぁ・・・」
と溜息をつく。 もうヤケだ。朝まで起きてやるよ。
どうせこんな直ぐ眠くなんねえしな。
柱に背を預けながらもう一度はあ…と溜息をつくだった。