ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: —GAME 鮮血の薔薇と漆黒の銃— 参照200突破…ッ!?  ( No.37 )
日時: 2011/03/29 01:56
名前: 瀬蒼 ◆baXqm01I8Q (ID: FzVK5xRK)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode


徹夜して何時間経っただろうか。
今だに俺は来るはずのない襲撃の為に起きていた。

「んぁ…」

小さく喘いでころん、と澪紅が寝返りを打つ。
愛らしい寝顔が、紅い月の光に照らされて此方に向けられる。
やっぱり、可愛いな。美少女ってこともあって。

澪紅はくーくーと規則正しい寝息を立てる。
殺し屋だとは思えない、年相応の顔だ。


「くあ…」

と澪紅の寝顔を見てつい、欠伸が漏れる。
瞼が自然に重くなり身体全体にだるさがある。

今日はずっと歩き続けたせいか、余計に眠いらしい。
てか今日一日歩き回ったのに誰にも会わなかったんだから真夜中に来る訳ないだろうが…

何だか色々口で丸め込まれた様な気が今更して来た。
畜生、自分だけ幸せそうに寝やがって。

襲ってくる睡魔に抗いながら、ぶつぶつと文句を垂れていると——



「……−?」

「———」

廃墟の外からか——誰かの話声が聞こえたような気が、した。
俺の幻聴か、と思って重たい瞼を開けながら夜目が効く俺がじろっと声をした方向を見る。

すると暗闇に浮かび上がる—誰かの紅い眼が一瞬、此方を向いた。
俺とほんの一瞬、目があった。

人だ。 しかも2人居る。

息を潜めて此処を通り過ぎてくれるのを待っていたが—
ジャリ、と靴を踏み鳴らしてしかもこの廃墟に入ってきた。

「澪紅!」
俺は立ち上がると同時に澪紅の名を呼ぶ。

するとさっきまでは規則正しい寝息を立てていたとは思えない俊敏さでバッ!と勢い良く立ち上がる。

すると左手で拳銃を抜いて素早く構えると、ばきゅばきゅ!!といきなり発砲してしまう。

だが澪紅が発砲した銃弾はキィン!と紅い月に怪しく照らされたギラリとした刃に跳ね返されてしまう。

紅い眼をした刃の持ち主はぶぅん、と刃を横薙ぐ。
ギラリと怪しく光る刃が澪紅の横腹に迫る。
澪紅は動じず軽く飛躍し、横薙ぎを見送る。

ザザッと砂埃を立てリーチ的に刃が届かない位置に着地すると
此方は届く拳銃で発砲しようとすると澪紅の後ろから迫る影が——


ぐるっと澪紅が振り向く勢いに任せて回し蹴りを繰り出す。
澪紅の後ろにいた人物は斬ろうとしたのか、持っていた剣での柄で澪紅の足を防ぐ。
すると剣を握っていない方の手から、有り得ないことに燃える小さな炎球が発生する。

その炎球に照らされたお蔭でその人物が見える。

艶やかな肩より少し長い黒髪、右のほうに紅いスカーフをつけている。
服は漆黒の黒でリボンとスカートは紅かった。
制服のような服に身を包んだ少女だった。
身長は澪紅より少し大きい位か。


その炎球を目の前に足を抑えられた状態の澪紅は吃驚して、少し目を見開いた澪紅に
その炎球を投げつけるが、澪紅はひるまずバック転のようにぐるっと一回転する。

何処にも当たらなかった炎球は壁に当たり、ジュっと短い音を立てて消えてしまう。

ついでにその少女の顎蹴りをするが身体を反らされてかわされてしまう。
そして着地したと同時に迫っていたデカい刃の持ち主が澪紅に向かって、デカい刃を振り下ろす。

澪紅は左手に握っていたままの拳銃で刃と切り結ぶ。
ギィン!と金属同士が擦れ合うような耳障りな音が響いて、に火花が散る。

名のように暗闇に火の花が咲いたようだった。


するともう一度炎球を持った少女がバッ、と天井に向けて炎球を放つ。
ひゅんっと天上にぶつかったかと思うとパッ!

灯りが灯ったようにこの部屋が明るくなった。

いきなりの光に予想していなかったのか澪紅はきゅっと身体を一度縮こませてもらう。


俺も一度萎縮してしまうが目を細めながら相手の姿を確認する。

童顔の少年でクリーム色のショートカットで頭のてっぺんに触覚のような髪がちょこんとたっている。
右目が灰色で左目が紅いオッドアイ。

こちらも制服風の服を着ており、首には十字架のようなネックレスがかけられていた。

「ちょっちょっと 待って!」

その童顔の少年は慌てた様な様子で鎌を下す。
澪紅は今だに少年に拳銃を向けたままだったが。

少年は両手を上げながら話し続ける。

「ぼっ僕はそんな戦うつもりなんてないんだよっ」

びくびくした様子で澪紅に訴え続ける。

その様子で「問題ない」と判断したのか、澪紅は向けていた拳銃をやっと下ろす。


「私達は誰かいるのかなって思ったから覗いただけだったんだけど…」

背後にいた少女が喋りかける。至って冷静でにこっと笑う。

「そしたら誰か居るようだったから話を聞いてみようかって入ったら、びっくりしちゃって」

えへ、と少女は笑う。と言うことは俺達の勘違いってことだったのか?
話を聞いた澪紅はじろり、と俺を睨む。
お、俺のせいかよ? まあ俺は「澪紅!」って叫んだけどさ。

てかそうしろって言ったのはお前だろ、という言葉は飲み込んだ。

「私は刻座 紗季。 よろしくね」

にこっと優しい笑みで笑う紗季。 誰かさんにもこういう挨拶の仕方見習ってほしいな。

「あ、僕は波兎 狸って言うんだ。 よろしくね」
こちらの少年も友好的に挨拶する。
澪紅に握手求めてるぞ。 どんだけお人よしなんだよ。さっきまで拳銃向けられてたってのに。

「…朝露 澪紅です」

「織坂 琉玖だ」
一応此方も名乗っておく。 ついでに言うと狸の握手なんてガン無視だ。ちゃきっと拳銃を仕舞う。

「そっかあ、澪紅ちゃんね。 よろしくね!」

紗季はにこっと笑いかける。
澪紅は自分も笑いかけるでもなく無視するでもなく少し会釈するぐらいだった。

狸は俺に近づいてきてよろしくねぇとスマイルを向けてくる。


「で、貴方達は何の話を聞こうと?」

ほんわかした空気をぶち壊すかのように澪紅が切り出す。

「あ、そういう事何だけど、ここが何処かまだ良くわかんなくて…何か知ってる?」

紗季が友好的に話し掛ける。結構懲りないやつだな。
と澪紅は俺にした話と全く同じ事を説明し始めた。



「ふーん、それで2人一緒に行動してるんだぁ」

話を聞いて澪紅と俺を指さす。
ていうかよく納得したな。 この意味が分からない「殺し合い」とやら。

「あ、じゃあさ。 私達も仲間に入れてくれない?」

「だねっ 僕達だけだと不安だし。君達が居てくれると安心出来るんだけど…」

殺し合いで安心も何もないと思うが。
そして澪紅は少し、考える様な仕草をして呟く。

「…勝手にしてください」

さっき自分と戦い、まあ使えるとかでも判断したのだろうか。素直じゃないやつだな。

「ありがとう! じゃ改めてよろしくね」

と制服二人組はにこーっと笑うのだった。
あんなに澪紅に邪険にされてたのに懲りないな。

俺は「おう」とだけ返してやった。