ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 白黒人間。 ( No.1 )
日時: 2011/02/19 22:14
名前: 紫 ◆v9jt8.IUtE (ID: VmnQ.FWP)

序章【ホワイトブック】

 人生と言う物は、凹凸がありすぎる。
 結果が届いて、いつも思い知らされる。これまでの努力と不安と期待が、全て別の感情へと変わっていく。
 この青年の場合、その感情は負の感情——つまり、自称小説家である青年の頭を埋めるのは、苦悩と溜息が体全体を埋めて、出る。ただし、出るのは溜息だけ。
 一回目ならまだしも、二回、三回……と続けばポジティブシンキングとも言ってられないわけで。何回になったのかも分からず、ただただ記録が伸び続ける。

 机の上に、おもむろに置いてあった自分の作品を手に取り、目を通す小説家。だが。その良さも悪さも分からない。普通にどこにでもありそうな小説。
 暫くの間、客観的に小説を読んでみるが、自分は自分。客になんてなれる訳がない。と言う小説家の無表情。次第に小説家の頭の中は、苦悩ではなく、疑問になった。
 『何がいけないのか』と思考し、次々とめくられる紙。その作業を繰り返し続けると、物語はそこで終わった。
仕方なく次の作品を手に取り、目を通す。が、小説家は次第に眠気を催している。
 限界だったのか、小説家は机に突っ伏している。紙のめくれる音も聞こえなくなり、部屋は、静寂とデスクの上にあるほのかなランプの光だけとなり、デスクの上には、先程まで小説家が読んでいた物語と、眠る小説家。
 なんとなく平和と言う言葉が似合うこの部屋に、事件が起こる。
 それは、光。小説家の辺りから、突如直視できない程のまばゆい光が出現。その光のもとは——小説家の物語。
小説家はと言うと余程睡魔がとりついていたのか、まだ目を開かない。
 しばらく強い光を出した物語は、ゆっくりと消えた。
————小説家も、消えた。

 次は別の舞台へと移る。
 ある、小さな村にその青年は倒れていた。その青年を、珍しそうな目で見る。自分達とは違う、奇妙な格好をした青年。
皆で青年の周りを囲い、怪しげな目で見る。が、青年が目を開ける様子はない。
 すると一人の少女が大きな声をあげる。

「はいはいはーい! この変な格好の人、私が引き取りたいです!」

そんな元気な大声に、村人は驚きと呆れの表情を見せる。

 この世界との出会いが、彼を覚醒させる原因となったのだ。