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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 白黒人間。 ( No.12 )
- 日時: 2011/02/19 22:29
- 名前: 紫 ◆v9jt8.IUtE (ID: VmnQ.FWP)
太陽も沈み、空の色がオレンジと化す頃。
田原優は泊まり場所を探していた。宿はあるのだが、町の通貨がない。
絶望した様に夕暮れの空を見上げ、思考していると、彼の頭の中で一つの考えが浮かんだ。
「ではごゆっくり」
とても可愛らしい、宿屋の娘の満面の笑み。
部屋の鍵を受け取って、自分の部屋へと向かう。
「はあ……」
ベッドの上に思い切り寝転び、溜息を吐く。
そして、黒いパーカーのポケットの中に手を入れて、十枚程の金貨を取り出す。
綺麗な光を放つ、真新しい金貨。彼はそれを見て、微笑んだ。
「俺の、能力か……」
そのまま、目を閉じた。
ほのかな光に包まれて、彼はベッドの上で目を開ける。
視覚がしっかりと機能してから、彼、田原優は自身の上半身を勢いよくあげる。
「ここは、俺の……」
部屋。そう言おうとしたが、急に息が詰まり、嘔吐しそうになって咳き込む。
——よぉ、元気か?
頭の中に声が響いて、吐き気に続き頭痛が彼を苦しませる。だが、そんな彼の事など気にせず、声は続く。
——あの時の梟だよ。お前、この世界に戻ったんだな
梟が田原優を馬鹿にして笑う様な声が田原優に向けられた。だが、そんな声なんて田原優には聞こえてない様だった。
——あの場所に居たいか?
梟は、田原優に向けて質問を投げる。田原優は、寝転んで苦しんでいる。
——ま、答えは分かってるけどね
その声の後に、一つの紙がどこからか落ちてきた。
——持って願ったら、きっと行ける
梟の声は、それを最後として消えた。
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