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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 白黒人間。 ( No.13 )
- 日時: 2011/02/19 21:14
- 名前: 紫 ◆v9jt8.IUtE (ID: VmnQ.FWP)
二話 【アイアム?】
田原優は、小説家になった。否、正しくは自称小説家に戻ったと言うべきであろう。
架空の世界。草原の中心にある町の宿屋に泊まったら、気付けば自分の部屋のベッドの上だった。
田原優は結構な時間居なかった様で、外を出れば近所の誰もが驚いたというものだ。
そして、田原優がここに戻ってきて一週間程。生活は苦しい様で、俯き、絶望している。あの夢をもう一度だけ見たいと、自分の物語に願って、自分の物語に縋って。
——物語に願っても、無駄な事なのだが。
梟が部屋に置いていった紙を手に取る。そこには、妖精の村、出会いの町、動物の場所と言う文字と、絵が描かれていた。
妖精の村は、緑がある自然な村の絵。出会いの町は、西洋風の作りの町の絵。動物の場所は、深緑の樹が広い範囲で描かれていた。北には草原と真ん中に出会いの町、西の少し離れた場所に妖精の村があった。
この中途半端な地図の様な紙を見て、田原優は気付く。
——まるで、夢の中であった出来事、と。
田原優は自分がここに来た時の事を思い出そうと頭の中であの時をリピートさせようとするが、必死に思い出そうとするだけで、思い出せない様子である。
すると、田原優は何かを思い出したかの様に紙を持って佇む。何もせずに、ただ目を瞑りそこに真っ直ぐ立つ。
白く眩しい光。梟が現れた時の様に、紙もとい中途半端な地図から放たれている。光が消える頃には、あの時の様に田原優も一緒に消えていた。
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