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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 白黒人間。 ( No.15 )
- 日時: 2011/02/25 20:48
- 名前: 紫 ◆v9jt8.IUtE (ID: j553wc0m)
彼はまた、行方不明になった。
彼は、その町に足を踏み入れ、暫く町を歩き続けていると、大声で泣いている少女の姿があった。
「どうかしたか?」
彼は少女の背の高さに屈み、優しい声色で話しかける。
「か、髪留め、なっ、無くしたのお……」
少女は、泣きじゃくりながら青年に伝える。青年は、一瞬驚いた様な顔をし、緑のベストにあるポケットを探り、物を取り出して少女の前に出す。
少女は、目の前にある桃色の花の髪留めを見て、驚いた。
「さっき拾ったんだ。貰ってくれ」
「……あ、ありがと」
手を差し出したまま、無愛想に青年は言う。少女は、安堵の笑みを見せ、涙で濡れている目を擦った。
「お兄さん、旅の人? 良ければ私の家に止まってく?」
表情を泣き顔から笑い顔に変え、青年に問いかける少女。彼は、少し悩んで答えを少女に言う。
「……うーん、まあ、お言葉に甘えようか」
二人で仲良く手を繋ぎ、少女の家に向かっている途中、無垢な少女が口を開いた。
「そう言えば、お兄さん、名前は?」
「ああ、そういやまだ言ってなかったな」
——レジェ・グリートル。
確かに彼は、その名を口にした。
「お前さんは?」
「私は、ヴィーナス!」
「そうか、女神さんか。お前に似合うな」
眩しい程の笑顔を見せ、目の前のレジェは少女に優しく言った。
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