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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 白黒人間。 ( No.17 )
- 日時: 2011/02/28 20:23
- 名前: 紫 ◆v9jt8.IUtE (ID: j553wc0m)
無垢な表情で彼はそう言った。その野次馬への呼びかけが、彼に大怪我を負わせる事になる。
「無視してんじゃねえよ!」
それは一瞬だった。青年の右腕に何か早い物がかすり、そこから赤い液体が出たのは、ほんの一瞬の出来事だった。
液体がドロドロと彼の腕から流れる。その彼は立ち尽くしている。そして、驚愕の表情で右腕の方に目を向けた。
——それは、明らかに血。黒い衣服から赤い血が流れ出てくる。手で押さえても、手が赤に染まるだけ。
野次馬たちは静まる事も無く、かと言って彼を助けようと行動する者はそこに居なかった。大体の者がそこで悲鳴をあげ、パニック状態に陥っている。
じわじわと、少しずつ痛みを催す腕。時間が経つにつれ、彼は鈍痛を顔で表す様になった。
「そろそろ死んで貰おうか?」
皮肉な笑みと銃を青年の額に向ける盗賊。青年は、何も言う事無く、ただ痛みに耐えているだけだった。
「銃で撃たれる事なんて望んでなかったけどな……」
無理矢理に青年も皮肉な笑みを作り、盗賊に言葉と一緒に向ける。盗賊が怒りの頂点に達し、引き金を引く瞬間。
「ちょっとー、何してんのよアンタ! 銃とか撃っちゃってさ。そっちも銃ぐらい避けなさいよ……って、アンタ」
「ヴィーナス……」
思いも寄らない、再会。
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